個人的に、今年のフジロックの出演アーティストの中で一番好きなバンドがこれから苗場食堂に登場する、ホットハウス・フラワーズだ。彼らの音楽に対する深い愛情（新譜『Let’s Do This Thing』の‟Music That I Need”を聴いてよ！）、自然への感謝（『Songs From the Rain』の‟Thing Of Beauty”を聴いてよ！）、世界平和を願う切なる想い（『Home』の‟Giving It All Away”を聴いてよ！）、人間にとって大切なことを、極上のR&B､ゴスペル､カントリー､フォーク､トラッド、そしてロックンロールとともにあらためて発見させてくれる本当に大切なバンド。フジロックの根底に流れるものを最も表現していると言っても過言ではないだろう。

バンドとスタッフが入念に音合わせをして、約10分遅れで開演。フロントマンのリアム・オ・メンリィが軽快に跳ねまくるキーボードのタッチですぐに分かった‟Movies”。中でも大好きなこの曲からキックオフだなんてめちゃめちゃ嬉しい！（フジロッカーズ・バー関西でも紹介した曲なのだ）縦笛（アイルランド発祥と言われるティン・ホイッスルというものだそうだ）というにより一段とアイリッシュな香りを醸成したり、リアムが太鼓（バウローンというアイルランドのフレームドラム）を手に、左右にバチを揺らし触れるように叩くニュアンスによって、祝祭的な雰囲気で盛り立てる。音源からはまったく想定していなかった展開にのっけから感動してしまう。

続いて披露されたのは、ジミー・クリフのカバーでも有名なジョニー・ナッシュの‟I Can See Clearly Now”だ。これまた想定をはるかに超えたロックンロールに大変貌。リアムは長い髪を振り乱して、ガンガンにピアノを叩きつける。ギターもハードロッキンにドライヴしてグイグイ来る。苗食一帯のみんなでヴァースを合唱し、一体となった。

お次は、ルンバのリズムを取り入れたような南国の風香るトロピカルなセッションがはじまった。トロピカルな色をキープしたまま、‟Don’t Go”に突入！おいおい、何じゃこれ？音源の知識のみで観に来たので、この良い意味での裏切られっぷりに大声で笑ってしまった。フラワーズのライヴでこんなに陽気に踊らされてしまうなんて、本当に想定外。この曲の間、いきなりアンニュイでジャジーなキーボードのソロが入ったり、ギターによる中東特有のいなたいフレーズが飛び出したり、AC/DC顔負けのハイヴォルテージ・ロックンロールになったりと、その目まぐるしい展開に終始驚かされっぱなしだった。彼らのライヴに同じものは2度とないと言われる所以がよく分かった。

「また会おう！日曜にフィールド・オブ・ヘブンで！」とたったの3曲にもかかわらず、最っ高のステージを繰り広げてくれた。ホットハウス・フラワーズの面々も、居合わせたオーディエンスもみんな笑顔でいっぱいだ。これこれ！このヴァイブスこそがフジロック！彼らは、音楽が好きで本当に良かった！幸せだ！と思わせてくれるバンドだ。こんな最高のバンドのライヴを観ないなんて、フジロックに来ないなんて、勿体ないぜ！