MOREFUNINTERVIEW7/27 FRI PYRAMID GARDEN
【インタビュー】結成20年を迎えたハンバートハンバートの決意と挑戦
家族と音楽、そしてこれからの暮らし方について
1998年に結成され、今年で20周年を迎えたハンバートハンバート。メンバーの佐野遊穂さんと佐藤良成さんは、プライベートでもパートナーでもあり、三児の父母でもあります。そんなお二人は、先月末に「2019年 ハンバートハンバートは平日しかライブをしません」という宣言を漫画で発表。「家族と過ごす時間を大切にするために」という理由と共に、大きな注目を集めました。
フジロックの初日、ピラミッド・ガーデンでのライブを終えたお二人にインタビュー取材を依頼。「子どもが生まれて無意識に変わっていった言葉選び」や「好きな仕事をすることと、好きな家族と過ごすことの間で感じるジレンマ」、話題の漫画の制作秘話などを伺いました。
▼子どもが生まれて無意識に変わっていった言葉選び
━━今年はハンバートハンバートを結成して20周年ということで、おめでとうございます。
佐野・佐藤:ありがとうございます!
━━20年は長かったですか?それとも、アッという間でしたか?
佐野:気づいたら20年。って感じでしたね。
佐藤:そうだねー。気づいたらねー。20年って、うちのスタッフに言われるまで気づかなかったんですよ。フジロックみたいに1年に1度のことだと、1回目、2回目って数えるけど、僕らは節目とかもなく、もうずーっとやっているので。
スタッフの方から、「今年は20周年だから、アルバム作りましょう!」って言われて、「あ、20年か」って初めて気づくみたいな。
━━20年ということは、音楽はもちろん、プライベートでもいろんな変化があったと思うんですが。
佐野:やっぱりありますね。子どもが3人いるんですけど、子どもたちがいたからこそ、土日はライブをやらないっていうアイディアも出たと思うし。もちろん、子どもがいることで音楽活動がやり難い場面もあるんですけど、よいことも、楽しいこともあります。今は子どものことを含め、自分たちの生活と音楽活動が並行してある感じですね。
佐藤:そうだね。音楽活動をやり難いことっていうと、子どもが急に熱を出しちゃったとかあるじゃないですか。
佐野:まさに昨日、子どもが熱を出して!「さぁ、家を出よう!」ってときに(笑)。
佐藤:そうそう。例えば、新幹線で移動中に保育園から電話がかかってきて、「熱出したので、迎えにきてください」とかいうことがあったりして。だけど、遠くにいると行けないじゃないですか。それで、実家の親に電話して、お迎えをお願いしてみたいなことが少なからずあるから。そういう部分は大変だなと思いますね。
━━うちも小さい子どもがいるので、よくわかります。
佐藤:時間も昔みたいに、1日24時間をまるごと自分たちのために使えるわけではなく、子どもがたくさんいると、ほとんどが炊事洗濯で終わっちゃうから。
そういう大変なこともあるんだけど、もちろんいいところもあって。なんかこうミュージシャンっていうのは、割とワガママっていうか、「俺がやりたいようにやる!」みたいな感じか強いんだけど、年をとったり、子どもが生まれると、自ずとそうじゃなくなってくるんですよね。自分が主役じゃなくなってくるというか。
━━自分のことばかり考えてもいられなくなると。
佐藤:そうそう。そのことが音楽の活動にも影響してて、つまり精神状態や、考え方が変わってくるんです。やっぱり若い頃は「俺の音楽だ!」と思ってたけど、実際にはひとりだと何にも動かないってことがわかってきて。
まず自分の音楽を聴いてくれる人がいないと成り立たないし、こうやってライブに呼んでくれる人がいて、はじめてステージに出られるわけだし、音楽をCDにレコーディングしてくれるレコード会社の人がいて、うちのスタッフがいてっていう。みんなで考えたり、行動するからこそできるんだっていう、当たり前のことがすごく身にしみて。年をとったこととか、子どもが生まれたことで、そういう変化があったなと思いますね。
━━主語が、〝自分〟から、もうちょっと大きくなったみたいな。
佐藤:そうそう!そうです。
━━それってやっぱり歌詞とかにも影響しますか?
佐藤:そうですね。自分では気づいてなかったんですけど、最近はそう言われることが多くて。ただ新しい歌詞を作ってるつもりだったんだけど、アルバムを録音し終わって、曲が全部並んだときに、スタッフから「これはもう、完全に家族がテーマになってるじゃん!」って言われて。自分では「えー?そう?」みたいな感じだったんですけど、無意識に歌詞がそういう方向に向いちゃってるんですかね。
佐野:そうだね、前回のアルバム制作のときに、曲を全部並べて、タイトルをつける段階で、はじめてスタッフからそういうことを言われて、「あぁ、確かに」って。
佐藤:そう。それで、じゃあ『家族行進曲』ってタイトルにしようってことになったんです、前作は。だから、アルバムのタイトルは、後から決まったんですよね。しかも、自分ではなく、スタッフの発言がきっかけで。
━━無意識のうちに感じることや、選ぶ言葉が変わっていたという感じなんですね。
佐藤:そうなんですよね。今回20周年でリリースした『FOLK 2』というアルバムは、カヴァー曲が半分、自分たちが昔からやってたオリジナルの曲が半分で、新曲が1曲入っているという構成なんです。再録の中には、それこそ20年くらい前に作った初々しいラブソングがあるんですけど、新曲は昔の何十年を振り返って、年をとったみたいな感じの歌になってて、これも特に何にも考えてなかったんですけど、スタッフにそういうことを言われたんですよね。
━━ハンバートハンバートの歴史を感じさせるようなストーリーのある構成になってるねと。
佐藤:そうなんです。
▼「2019年 ハンバートハンバートは平日しかライブをしません」漫画の制作秘話
━━20周年の節目に「2019年 ハンバートハンバートは平日しかライブをしません」という宣言をしたのは、何か意図があったんですか?
佐藤:自分たちもだし、周りのスタッフも子どもが大きくなると学校行事とかがあるじゃないですか。そういうのってやっぱり土日に多いんですけど、僕らは土日にライブが入っていることが多くて。だから、試しに1年間は平日にしかライブをしないというのをやってみようかなと。ずっとそれをやっちゃうと、二度とここには呼んでもらえなくなっちゃうし、本当に困っちゃうので(笑)。とりあえずは、1年やってみようかなと。
━━土日にライブをしないというのは、けっこうチャレンジングなことだと思うんですけど、あれを漫画にして発表しようと思ったのは、どうしてだったんですか?単純に漫画としてすごく面白くて、めちゃくちゃ印象に残ってるんですけど。
佐野:いや、私たちも全然あんなふうになるとは思ってなくて(笑)。
━━あれは、どこまでお二人側で考えたんですか?大筋だけを考えて、それを漫画家の田中光さんにお渡ししたという感じですか?
佐藤:設定もキャラクターも完全に田中さんのオリジナルです(笑)。僕たちは、「土日はライブをしません」とか、「理由は家族との時間を大切にするためで」とか、内容を箇条書きでお渡しして、これを漫画で伝えるようなものにしてくださいってお願いしたんです。
だから、イメージとしては、箇条書きにイラストが入って、漫画っぽくなってくるのかなって。だから、まさかあんなことになるとは思ってもみなかったんですよね(笑)。
佐野:ストーリーがある漫画になるとは思ってなくて、本当にイラストに文字をのせるくらいのものを何枚か描いてもらうようなイメージでお願いしたら、あの漫画が届いて。
━━最初に読んだときは、どう思いました?
佐藤:いや、もう爆笑ですよ(笑)。
佐野:田中さんはよくライブを見に来てくださってて、漫画も読ませてもらったことがあったんですけど、どちらかといえばユルい作品を描くイメージで。まさか、あんなに熱い漫画になるとは思ってもみなかったです(笑)。
▼好きな仕事をすることと、好きな家族と過ごすことの間で感じるジレンマ
━━土日をお休みにする来年1年間で、具体的に「コレがやりたい」というのはありますか?
佐野:あまりしてこなかったので、旅行とかしたいですね。あとは、学校行事。真ん中の子が保育園に行ってたときは、最後の年の運動会に行けなかったんですよね。
佐藤:ちなみに昨日も誕生日だったんです。
━━あらー。そうなんですね。
佐藤:そういうのがつきものなんですよね。まぁ、好きでやってるので、しょうがないっちゃしょうがないんですけど。
佐野:別にミュージシャンだけじゃなくて、他の仕事でもそういう人はいると思うんですけどね。
佐藤:俺らの場合は、2人ともいなくなっちゃうんですよ。子どもをお母さんに預けて、俺だけが行くみたいなことにはならないので。そうなると、自分の親とかに預かってもらうことになるんですけど、やっぱり子どもからすると親とおばあちゃんって違うじゃないですか。
━━お子さんから「寂しい」って声もあったんですか?
佐野:やっぱり、直接はあんまり言わないですよね。我慢しちゃうというか。だけど、何かイベントがあったときに「今回はいけるよ!」とか言うと、すごく喜んだりして。「あ、やっぱり嬉しいんだな」って。
佐藤:もう少し大きくなったら、「お父さんとお母さんがいないから、よし!」って思うこともあると思うんだけど(笑)。やっぱり今はまだ、寂しいときもあるんだろうなって。子どもを見てて、そう思うことはありますね。
━━ご家族で一緒にフェスへ行ったりすることはないんですか?
佐野:あんまりないですね。人のライブにもなかなか行けないんですよね。土日だと、だいたい自分たちのライブがあったりするので。だから、来年はちょっと行きたいなって!
佐藤:そうだね。来年だね!
━━来年は、ご家族でフジにも来れるかもしれないですもんね。
佐藤:そうだ!そうですね。
佐野:だけど、迷子になりそうだね。全然、言うこと聞かない子たちなんですよ。
━━そうなんですね(笑)。それはどちらに似たんですか?
佐野:…。
佐藤:…。
━━お互い顔を見合わせてますけど(笑)。
佐野:彼はいつも「俺はこんなに言うこと聞かない子どもじゃなかった!」って言うんです。だから、あんなに言うこと聞かない子の気持ちがわからないって(笑)。
▼大好きだけど、緊張もするフジロック
━━最後にフジロックについて聞かせてください。お二人は、いろんなイベントに出演されていると思いますが、その中でもフジロックというのは、どのような存在ですか?
佐野:たぶん、自分たちが出ている中で1番大きいフェスなんですよね。だから、やっぱりもう楽しみ。
佐藤:最初に出た苗場食堂が本当に楽しかったんですよ。お客さんの熱量がすごくて、自分たちもすっごく楽しくて。そこからすっかり「フジロックいいなー!」と思うようになって。
ただ、最初の苗場食堂がすごくよかったんですけど、その次はいきなり大きなステージになったんですよ。オレンジコートだったんですけど、なんか緊張しちゃって。フジにのまれるかたちになっちゃったんですよね(笑)。「あの苗場食堂の元気はどこにいったんだ?」ってくらいで。
佐野:あのときは、若かったのもあるしね(笑)。
佐藤:だから、「今年こそは大きいステージでも楽しくやるぞって!」って気持ちで臨んでますね、毎回。
━━今日のライブは、めちゃくちゃ気持ちよかったです。
佐藤:今日はすごくよかったね!
佐野:楽しかったです。
佐藤:明日はバンド編成でやるので、また違った感じになると思います。
━━明日のライブも楽しみにしてます!お疲れのところありがとうございました!
佐野・佐藤:ありがとうございました!
[写真:全2枚]