LIVE REPORTRED MARQUEE7/25 THU (EVE)
ReN
前夜祭の狂騒に、一陣の風を吹かせた男
前夜祭、苗場の天気はいつも以上に気まぐれだ。DJ MAMEZUKAが2度目のライブを展開中、いきなりの土砂降りにRED MARQUEEに逃げ込んでくる人は増える一方。そして気まぐれな天気はむしろオーディエンスのテンションを上げる。もう矢でも鉄砲でも降ってこい。テントの外まで、いやむしろ外の方が踊り狂う人だらけだ。
だが、そんな場所でライブをやることはアーティスト、それもまだ若いアーティストにとってはまたとない自分の地力を試せる絶好の場所だと思う。DJ MAMEZUKAが明日のヘッドライナー、THE CHEMICAL BROTHERSの“ヘイ・ボーイ、ヘイ・ガール”をスピンし、明日、本物が登場したらどうなるんだ?というぐらい踊っていた人たちをその場に留めさせられるかどうか?ということなのだから。
小さめのアコースティックギターとミネラルウォーター2本を抱えて、スタスタとステージに登場した痩躯の青年、彼がReN。名前こそ知ってはいるがライブは初体験。あえて何も調べず丸腰で見ることにする。後にも先にも今しかない初体験を堪能したいと思ったからだ。ループ・ステーションを使い、ギター・カッティングでビートを作り、次はファルセット気味の高い声、さらに低めの声を重ねていく。そのための2本のマイクだったのか。今ではリアルタイム一人多重演奏は珍しくないが、やはり演奏とエフェクターへの反応と歌のタイミングは、鍛錬して体得するというより、運動神経の良さが必須な気がする。その点、ReNはフットワーク良く、体も心も連動させてその場で音楽を作り上げていく。
「今日という日を超楽しみにしてきました!」と、歯が見えるぐらいの大きな笑顔で、今このステージに立っている喜びを表現。雨の様子を心配しつつ、“HURRICANE”!とタイトルコール。この状況に似合いすぎなんだが……。R&Bのミディアムチューンにありそうな、エキゾチックなリフをループさせ、ギターのボディを叩いてアクセントをつける。ギターと自分の身一つ(ループ・ステーションはあるけれど)で、ここまでポップ・ミュージックを作ることができる痛快さ。演奏することの楽しさ。彼が発しているメッセージはまだはっきり把握できないが、彼の動作が生む音楽から目が離せない。
「前夜祭から来るようなみんなだから最高なのは当然なんだけど」と前置きし、「日々届くニュースは悲しいものが多いけれど、音楽で自由に体を揺らしたり、自分のグルーヴで楽しんで」という意味のMCをして、グッとその場の空気を親密にするあたりも自然だ。最後も“Lights”とタイトルコールし、モノトーンのバックライトに照らされながら歌う彼は、孤独を選んで、その自由も責任も楽しんでいるような姿。まるでシャドー・ボクシングをしているようだった。短いステージだったが、確実に前方のオーディエンスは彼から目を離さず、音楽を受け止めたはずだ。
[写真:全10枚]