FUJIROCK EXPRESS '19

LIVE REPORTRED MARQUEE7/25 THU (EVE)

亜無亜危異

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Photo by おみそ Text by 三浦孝文

Posted on 2019.7.25 23:59

苗場に響き渡る反骨のパンクロック!

ようやく、今年も元旦を迎えた気分だ。フジロック0日目。我らフジロッカーにとっちゃ、クリスマスとお正月、子供の日なんかが一緒くたにやってきたようなもの。「いよいよ…はじまる!」身体の芯から湧き上がってくるこのワクワク感は、前夜祭ならでは。今夜用意された、レッドマーキーでの前夜祭スペシャルセットもフジロックの原色を描いているかのようなストーリーが感じられた。

DJ MAMEZUKAが、ワンセット目でバンダ・バソッティによるザ・クラッシュの名曲“Revolution Rock”で締めくくり、Fujirockers.org主宰の花房浩一が投げかけた「ここにいるのは戦争なんて無縁の仲間たち」というバンダ・バソッティの“Fuji Rock”の胸アツなフレーズに思わず胸を焦がしてしまう。そして、今年の目玉アクトのひとつ、レッド・ホット・チリ・パイパーズがロックの名曲を涙腺にくるバグパイプの音色で味付けしてパンパンな会場に笑顔を咲かせ、会場の外は降りしきる大雨の中、Renがたった一人で繰り出した“Hurricane”のグルーヴに、固唾を呑む者や身体を揺らす者、フロアは思い思いに呼応していた。本日3セット目でMAMEZUKAが回した、ザ・タイマーズによる“税”で会場に醸成した清志郎節。どれもが忘れらないフジロックな瞬間だった。

前夜祭スペシャルセットにおける今夜最後のライヴは、日本が誇る「ザ・パンクロック」バンドの亜無亜危異(アナーキー)だ。パイパーズの時間帯に比べると幾分人が少なくなってしまったように感じたが、ステージ前方まで行ってみると何のことはない。DJ MAMEZUKAが繰り出すラテンノリのご機嫌なビートに身体を揺らし、はしゃいでいる人たちでぎっしりだ。MAMEZUKAのセットが終わり、暗転すると「アナーキー!」コールがフロアから巻き起こる。盛り上がるフロアとは対照的に、ステージはシンと静まり返り緊張感がただよっている。はじまる…。

バンド名の由来でもあるセックス・ピストルズの“Anarchy in the U.K.”のシャンソンバージョン、“L’anarchie Pour Le Uk”が会場に鳴り響く中、バンドがステージに登場した。仲野茂(以下シゲル)が「東京イズバーニング!」と叫ぶや否や、会場の熱が一気に上がる。皇室を批判したこの問題曲からいきますか。耳をつんざく爆音が会場全体を支配し、あっという間に1発目の“東京・イズ・バーニング”を駆け抜けた。ギターの藤沼伸一がスティッフ・リトル・フィンガーズの“Suspect Device”の敬愛カバー、“3・3・3”のリフを軽快に刻むと、ステージ前に自然とサークルが形作られ、モッシュの嵐が吹き荒れる。当然の反応だ。シゲルはシャツを脱ぎ捨て、上半身裸になって歌とパフォーマンスに全身全霊を込めている。「お前らの覚悟はどんなもんだ!?」と煽るがごとく、“缶詰”に“団地のオバサン”と立て続けにドパンクな疾走チューンをグイグイと突きつけられ、頰をはられているような感覚を覚えた。

亜無亜危異による最新のフォーム“パンクロックの奴隷”は、間違いなく本セットのハイライトだ。よりダーティー、かつハードコアに仕立てられた本物のパンクな毒が満載の楽曲。加えて、間奏ではコバンこと小林高夫によるタイトなビートをバックに、シゲルが「ドブネ~ズミみたいに〜…」とザ・ブルーハーツの“リンダ・リンダ”一節を歌い上げるものだから、クラウドサーフも飛び出すは、モッシュはノンストップ状態と化すわでフロアは完全に制御不能状態に陥った。

止められない反骨精神をそのままストレートに表現した亜無亜危異のアティチュードは、そのまま“ホワイト・ライオット”でジョー・ストラマーに捧げられる。ラストは、シゲルがステージから降りて、柵の上からクラウドに向かって終始叫び散らす“ノット・サティスファイド”で、約30分間ぶっ通しで繰り広げられた激アツステージの幕を引く。シゲルは完全燃焼の面持ちで一言「じゃあね、フジロック!」とステージを後にした。

フジロックの精神のひとつは「反骨」だ。それもとびきりの愛にあふれ、現実を直視し未来を切り開いていく「反骨」だ。フジロックを愛したジョー・ストラマーや忌野清志郎の魂は、間違いなくここ苗場に息づいているのだ。

[写真:全5枚]

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7/25 THU (EVE)RED MARQUEE