LIVE REPORTGREEN STAGE8/21 SAT
KEMURI
Photo by MITCH IKEDA Text by イケダノブユキ
Posted on 2021.8.21 15:16
ふみおの涙
代表曲"P.M.A"を終えて、ラストの曲を演奏する前にヴォーカルの伊藤ふみおは、このフジロックに出演することをメンバーに訊ねたら賛否が分かれたことを明かしていた。その迷いの中でフジロックにでてライヴをやり遂げようとしていた。スタッフや関係者へ感謝を伝えている途中からふみおは感極まって涙を浮かべていた。
そして演奏されたのが「白いばら」だった。この曲はKEMURIのメンバーでツアー中に亡くなった森村亮介に捧げられたものだった。つまりは身近で大切な人を亡くしたことについての歌なのだ。この1年半、身近な人を亡くした多くの人たちへの思いにこちらの涙腺が決壊した。
歓声を上げられない、合唱できないステージ前の人たちに気を使う言葉を投げかけるふみお。百戦錬磨のライヴバンドであるKEMURIでも、このような状況でやりずらそうである。声がだせない分、身体で音への反応を表現していた。どの曲も津田と平谷のリズム隊が疾走して、田中のギターが切れ味あるスカのリズムを刻んだり、パンクなコードを鳴らしたりして、コバヤシ、河村、須賀のホーン隊が盛り上げに徹する。ベテランの安定感で次々と曲を繰りだしていく。
「みんな分断は望んでいない」とふみおは訴え、一致団結を目指す。このときだからこそ、PMA、POSITIVE MENTAL ATTITUDE(肯定的精神姿勢)が必要であるし、元気に演奏していることの意義があるのだろう。晴れて暑い苗場の空の下、"ANCHOR"から始まったライヴは、"Prayer"、"Heart Beat"、"new generation"と定番曲を投下していく。新曲"Blue Moon"やコロナ禍で自粛になった時期を描いた"My Ghost Town”なども織り交ぜつつ、"Ohichyo"や"Along The Longest Way"という定番曲で惹きつけていく。
フジロックと共に歩んだKEMURIは、お客さんたちの思い出と共にある20年以上の積み重ねがあるので、久しぶりの人にもやさしいセットリストになった。そしてラストのふみおの涙にもらい泣きしてしまうのであった。
余談ですが、インターネットの配信をみている人に向けての言葉なんだろうけど、ふみおは「テレビの前」を連発していたのは、いや今はテレビに接続して観ている人もいるのだろうけど、パソコンで観ている人の方が多いのではないだろうか。けっこう天然な人なのかなと思ったり。
[写真:全10枚]