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サニーデイ・サービス

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Photo by MITCH IKEDA Text by 梶原綾乃

Posted on 2021.8.22 14:09

いいね!

流行り病や辛いニュースやSNSの衝突。すべてにうんざりしていたときに、たったひと言「いいね!」と肯定してくれたサニーデイ・サービスに、どれだけ救われたことか。先が見えないコロナ禍に象徴的なひとつのアルバム。難しいことは一切なくて、ただロックを始めたばかりかのようなみずみずしさにあふれたサウンド。もちろんサニーデイ・サービスはいつだって素晴らしいんだけど、いま、こんな音を鳴らせる彼らが本当に好きだ。

この日のセットリストは、アルバム『いいね!』からを中心に……なるかと思っていた。でも今日は、フェスならではのオールタイム・ベスト的な強い楽曲たちが並んでいた。まず、最初が“恋におちたら”。声がなくとも観客の喜びが伝わってきたし、隣の男性も小さくガッツポーズをしていた。あの優しいアルペジオと、いつにもなくロマンチックな歌声が五臓六腑に染み渡る。そうそう、この感じたまらないなあ!なんて思っていたら、一転“さよなら! 街の恋人たち”では、ひたすらにエモーショナルなセッションが繰り広げられた。田中貴のベースは骨太で、曽我部恵一のギターは色っぽくて。大工原幹雄のドラムはごろごろと暴れ回っている。なんだこれは。むちゃくちゃエモくないか。

続いての“春の風”は、かなりの盛り上がり。『いいね!』からの楽曲であるのはもちろんだけど、周りを見渡すと若いファンが増えてきているように感じる。シンプルで、歌えて、盛り上がれるこの曲はやっぱり輝きを放っていたし、思わず涙ぐんでしまう自分がいた。続いて“コンビニのコーヒー”でも、かなりのセッションが繰り広げられた。え、サニーデイ・サービスって、こんなに衝動的で、即興的なバンドだったっけ。そんな驚きとともに、感動が湧き上がってくる。続く“セツナ”もまた、まるでセツナじゃないみたいなハードな展開で胸がぎゅっとなった。

その後何事もなかったかのように“白い恋人たち”をしっとりと響かせると、ここからはもうずっと無敵。「ありがとうね、よく来てくれたね」と、今ここにいる我々を肯定してくれる曽我部の優しさに、私たちの緊張の糸もわっとほどけていく。“サマー・ソルジャー”の大熱唱(もちろん各々心の中で)が繰り広げられたら、さらに“若者たち”からの“青春狂走曲”でとどめを刺された。

“青春狂走曲”なんて、ずるいに決まっている。<そっちはどうだい うまくやってるかい/こっちはこうさ どうにもならんよ>のそっち側とこっち側は、距離が遠くなった私とあなたかもしれないし、苗場にいる私と画面の向こうにいるあなたかもしれない。とにかく、人とうまくつながれない世の中にこの曲が、どんな特別な意味とパワーを持って鳴らされたことか。こんなことになるなんて、全く想像がつかなかった。

それぞれがこの時を胸に、どんな思いであったとしても、サニーデイ・サービスはそれらをすべて受け止め、肯定してくれる。深い悲しみを乗り越えて、また改めて走り出した彼らの生きる衝動に、今年もたくさん泣いてたくさん笑わせてもらった。

[写真:全10枚]

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8/21 SATRED MARQUEE