FUJIROCK EXPRESS '21

LIVE REPORTRED MARQUEE8/21 SAT

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Photo by MITCH IKEDA Text by 梶原綾乃

Posted on 2021.8.22 02:55

尖った心も、晴れていく

フジロック2021、初日にはなかった土砂降り。「ああ、今年も降ってきちゃったか〜」なんて、半分イライラしつつも、もう半分は嬉しい気持ちでMiletを見に行く。この雨の強さだとレッドマーキーは人でいっぱいだろう、ソーシャルディスタンスに気をつけながら入ってみたところ、ちょうどよく雨が落ち着いてきた。それでも人は一向に減らない。ああ、ここにいる人は雨宿りじゃない。Miletを待っているのだ。

ドラマ主題歌への抜擢や、NHK紅白歌合戦、オリンピック閉会式への出場を果たし、瞬く間に人気を獲得したMilet。昨日は、MAN WITH A MISSIONのステージに登場し、「Reiwa」を披露したことでも注目を集めている。バックにギター、ベース、キーボード、コーラス、ドラムの5人を従えたmiletは、赤を基調とした服装(レッドマーキーだからレッドにしたそう)で颯爽と登場した。

1曲目“Again and Again”が始まった瞬間、空気がガラリと変わったのを感じた。曇り空を引き裂くように鋭い彼女の歌声に、観客は早くも心奪われた様子だった。「始まりました、フジロック!」との声から続く“Diving Board”は、彼女の歌唱テクニックにグッと迫れる1曲。渋みと強さのこもった独特な声と、グローバルに発音される日本語の語感のよさを、すみずみまで味わうことができた。
彼女の出発点ともいえる1曲“inside you”では、7本の赤い光が彼女を灯す演出。最初のサビはしっとりと、次はダイナミックに歌い上げる。曲が進むにつれて感情のツマミを少しずつ調整していき、やがて一気に爆発させていた。“Fire Arrow”になると、会場はよりドープな雰囲気へと到達した。絡みつくような歌声と、アメコミのダークヒーローのような妖しさ。ドキドキしたのは私だけではないはず。

彼女といえば、その魅力的なアルトヴォイスでダークなナンバーを得意としているイメージがあった。白鳥というよりは、黒鳥のような感じだ。けれども今回わかったのは、“Wake Me Up”のような視界の開けた楽曲や、“Ordinary days”みたいなまっすぐな愛の歌もハマること。「プロのフジロッカーでしょ?もうちょっとプロっぽいとこと、見せてよ!」なんて言えてしまう飾らなさと可愛らしさ。TVだけは見えていなかったMiletのあらゆる魅力がこのライヴには詰まっていた。

ドラマ主題歌でもあった”us”は、この日一番の盛り上がりを見せた。イントロから大きな手拍子が始まり、彼女はそれに応えるようにステージを右へ左へと動き、感謝の気持ちを伝えながら歌っていった。そして、「これからも、みんなのために歌っていきます」と、MAN WITH A MISSIONのKamikaze Boyが提供した楽曲“Grab the air”も披露。私達にたくさんの投げキッスをして、去っていった。気づいたら空も晴れ、なんだか心も晴れやか。土砂降りの雨で尖った心も優しく解きほぐしてくれる、包容力あるステージだった。

[写真:全10枚]

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8/21 SATRED MARQUEE