FUJIROCK EXPRESS '24

LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/26 FRI

KING KRULE

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Posted on 2024.7.27 01:28

キング・クルールの世界へようこそ

UK次世代を担う孤高のアーティスト、キング・クルールことアーチー・マーシャル。彼のフジロック出演が決まった際のUKインディーロックファン界隈のざわめきっぷりは本当に凄まじかった。その外見は決してロックスター然としているわけではなく、むしろ出身のロンドンの街を普通に歩いていそうな兄ちゃん、と言った方がしっくりくる。そんな彼だが、鳴らす音楽は天才的にアーティスティックだ。ポスト・パンクやジャズ、インディー・ロック、ポスト・ダブステップ・・・など、ある特定のジャンルに収まることなく、一言では説明できない、とらえどころのないサウンドの持ち主だ。

前置きが長くなったが、つまりは「すげぇ天才がやってきた!」という話である。レッドの前方にはかなり早い時間から多くのファンが集まっていて、スタート時間が近づいていく中、皆彼の登場を待ち侘びているのをひしひしと感じる。するとスタート時間を少し過ぎ、アーチーとバックバンドメンバーたちが登場。バンド編成は、アーチー含めギター2人、ベース1人、マルチキーボードプレイヤー1人、ドラム1人、サックス1名の6人編成だ。

リリカルな印象が強い原曲をペイヴメントばりのオルタナティヴな“Alone, Omen 3”から始まったライブは、原則原曲のアレンジ通りに演らないジャム感が強く、さらにいうとそのアレンジはカオティックですらある。“Alone, Omen 3”が終わり、次の曲紹介でアーチーは「This is next song is wooooooooooooo!!!!」と謎の咆哮を放つ。こういったシーンを目の当たりにするの「キング・クルールを観てるんだ!」という実感が怒涛のように湧いてくる。

ヘヴィーながらも緩めのローファイ・ロック “Dum Surfer”、カオティックな中にもサックスの美麗な音色が響き渡る “Pink Shell”、パブ・ロック風味で大合唱も発生した“A Lizard State”ではスペーシーなジャズ・ジャムセッションもあったりと、彼の世界観の中にあっても緩急のついた流れを作り出す。そんな展開によって、レッドは酩酊しているような空気感が出来上がり、オーディエンスのテンションもどんどん不思議なベクトルに上がっていく。

新作の表題曲“Space Heavy”では、カオスとコスモス、ギリギリのラインを行ったり来たりする展開に、オーディエンスはなんとかノリについて行こうと必死だ。スペース・グルーヴィな“Flimsier”でのアーチーの囁くようなヴォーカルにむせび泣くようなサックスの音には、先ほどとは逆にそのグルーヴに身を任せる。この曲が終わり、ここから中盤へと突入していくのだが、謎の疲労感がある。それはライブならではの超絶変則的なグルーヴについていくのに必死だったからだと思う。しかし、こんな疲労感もキング・クルールの世界を堪能できている実感とイコールになっているようで逆に幸せだ。本当の意味での多幸感とはこういうものだったりするのだろうか、そんなふうにも感じたりする。

ライブ中盤に突入し、キング・クルール的な音楽世界がより濃厚なものなった3rdアルバム『Man Alive!』と、アーチーに初子が生まれソングライティングにメロディに変化表れてきた『Space Heavy』、そして最新EP『SHHHHHHH!』、それらからの曲が続き、アーチーの周りの世界が変わる様が壮絶な演奏によって表現されていく。終盤に入るとダークで内省的な初期のアルバムから代表曲が2曲続く。“Easy Easy”では演奏が始まって早々にオーディエンスはクラップハンズで迎え、コーラスパートに入るとシンガロングが起き、この日一番のアッパーな盛り上がりを見せた。ムーディーな雰囲気の中ロマンチックなサウンドが鳴り響く“Baby Blue”では一転して緩やかな音の揺らぎに身を委ねるのが心地良い。

ラストへの流れは、さらに”とらえどころのない”キング・クルール的世界観そのものだった。
EP『SHHHHHHH!』から“It’s All Soup Now”では、歌い出しの歌詞《There’s a cat on the roof(屋根の上に猫がいる)》に準えるかのように、ファンに猫の鳴き声「ミャオミャオ」を要求するアーチー。ファンの猫の鳴き声をバックに歌い始めた。ジャジーな演奏の中、ムーディーなサックスとアーシーのブルージーなヴォーカル、そんな彼の世界に「猫の鳴き声役」として参加できたのは、あまりに想定外すぎる特別な体験だった。

<セットリスト>
01. Alone Omen 3
02. Dum Surfer
03. Pink Shell
04. A Lizard State
05. Space Heavy
06. Flimsier
07. Seagirl
08. Airport Antenatal Airplane
09. Time For Slurp
10. Stoned Again
11. Seaforth
12. Easy Easy
13. Baby Blue
14. Out Getting Ribs

[写真:全10枚]

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7/26 FRIRED MARQUEE