メスティーソ(混血)のパーティは終わらない
今、日本において新たなムーブメントとなるのは、メスティーソ(混血)の音楽かもしれない。
もっとも、90年代初頭に話題となったマノ・ネグラをご存知の方もおられるだろう。マノ・ネグラで成熟した(しかし、それ以降情報はなかなか入ってこなかった)「ごった煮」の魅力を、20年経った今において送り出しているのが、小宮山ショーゴ氏率いる、『ラディカル・ミュージック・ネットワーク』の芯となるイベント『ファイト・フォー・ライツ』だ。
実は、マヌ・チャオ・ラ・ヴェントゥーラは、水曜日に下北沢のガーデンで行われたショーゴ氏のイベント、『ラディカル・ミュージック・ネットワーク』に出る予定だった。だが、訳あってキャンセルとなった。その内実は、ここでは書く事が出来ないのだが、「それならば、仕方がない」というような事だ。マヌ側に一切の非はない。出演が取りやめになっても、マヌのHPには『ラディカル・ミュージック・ネットワーク』のフライヤーが載っていた。
パンクな精神に様々な血(文化)が混じっている…そんなラテン・メスティーソの音楽にどっぷりと浸かったのが、藤井サトル(今回は体調不良により欠席)、須藤一裕、松岡徹が中心となって結成されたカリビアン・ダンディというDJチーム。元は、東京のアンダーグラウンド・シーンの礎として確固たる地位を築いていた、『ロンドン・ナイト』(現在は不定期)周辺の人間だ。
ショーゴ氏は、フジロックで、このPOWに関われることを光栄なことだと言っていた。そして、日高大将がいる限り、「協力し続ける」とも。フジロックの良心と言うべきか、それとも無茶というべきか、ヨーロッパが羨む、アマドゥ・エ・マリアム〜マヌ・チャオ・ラ・ヴェントゥーラ〜オブリント・パスという流れを締めくくる時間を任されたことに、充実を感じているようだった。
時間帯としては、クールダウンを促すのが常なのだが、ラテン・メスティーソの音は飛び抜けた刺激に満ちており、朝方になっても寝かすことを許さない。
フェルミン・ムグルサ、トドス・トゥス・ムエルトス、エル・グラン・シレンシオ、バンダ・バソッティ、エスネ・ベルサといった過去のフジ出演者から、チェ・スダカ、ラ・ペガティナなどなど、今後の来日が期待されるアーティストの楽曲は、「ジャンル分け」という行為はまるで意味をなさない。ありとあらゆる文化が音の粒となって炸裂していく。ステージ上のDJチャコの手元からはシェイカーがばらまかれ、明け方においてもなお熱を投下し、循環させていた。
このパーティが相当楽しかったのだろう、マヌ・チャオ・ラ・ヴェントゥーラの一行は、8時あたりまで、バックステージで大騒ぎしていたそうだ。
文・西野太生輝
写真:前田博史