懐かしくもキュートな魅力に満ちたロックを堪能
モーニング・ベンダーズと一緒に行う予定だった今年3月の来日公演が震災の影響で中止になってしまったので、今回が初来日公演となったBEST COAST。「初めての日本、とても興奮しているわ!」という途中のMCからも彼女たちの強い想いを感じ取った人も多いだろう。キュートな中に強さが滲み出た本日のパフォーマンスにもまたバンドの魅力がたくさん詰め込まれていた。
BEST COASTは、Pavement系のローファイなサウンドに、サーフ・ロックやシューゲイザーやドリーム・ポップといった様々なニュアンスを含んでいるのが特徴的だろうか。軽やかなギターと心地よいテンポ、そしてベサニーのヴォーカルというシンプルな組み合わせで、キャッチーでラフなロックを聴かせてくれる。それがとてもポップで耳馴染みが良く、心の中に優しく響く。懐かしさと甘さ、それにモダンな要素が絶妙に折り合いをつけて、彼女たちの眩いサウンドを形成している。
また、昨年からは元Vivian Girlsのドラマーであるアリが加わって、パワフルな見た目同様のドラムで楽曲に強さを与えている。曲が締まった感じがするのも彼女の影響が大きいように思う。ひとりだけ怪しい容姿をしている男性ベーシストの仕事もまた堅実。前述したように本当にシンプル(故に、曲調はどれも似ている印象を受けたが)だが、ビーチの匂いがするカラっとしたロックへと昇華しているのは見事。代表曲である「Boyfriend」の甘酸っぱさと心地よい躍動感には、本当にノせられた。中盤では新曲も披露していたが、「Crazy For You」から始まったラストの盛り上がりが印象的。手拍子に乗せて爽快に歌いあげたり、より勢いを増した楽曲を投入したりして、会場との一体感が凄かった。ベサニーの投げキッスも飛び出したし、十分に満足するステージだったことだろう。
しかし、シチュエーション的にはカラっと乾いた地面で太陽を浴びながら、彼女たちの演奏を楽しみたかったのも事実。次は青空の下での演奏を期待したいところ。絶対そのほうが心地よいと思うから。彼女たちの次を楽しみに待ちたい。
写真:古川喜隆
文:伊藤卓也