独特のデザイン性を誇る音楽
LEO今井と向井秀徳による新プロジェクトKIMONOSが、昨年の始動から早くも苗場に降臨した。お互いに寄りそう形で、ギター&ヴォーカルの向井とシンセサイザー&ヴォーカルのLEO今井が陣取る2人編成。後半の6曲目からは、サポート・ドラマーにGREAT3の白根賢一を迎えての3人編成となっていたが、あくまで2人でのプロジェクトというこだわりを持っている。
ライヴは、向井の湿っぽいギターとどこか寂しげな風情を感じさせる歌声が冴える「The Girl In The Kimono Dress」でスタートし、物憂げな「Miss」でその音世界はさらに深まっていく。
シンセやサンプラー等を使ったニューウェイヴ風の意匠に、向井のギターが妖しい趣を持って空間に響いていくのが特徴的だとは思うのだが、彼のこれまでのプロジェクトと比べると”刺さる”という感覚は、劣るように思う。ソリッドな演奏が見受けられたりもするのだけど、変わりにKIMONOSでは、”間”の取り方や切り方に一日の長があるように個人的には感じた。また、バンド名通りに和を感じさせることが多いのに、多国籍な音が詰め込まれていたり、あらゆるジャンルに踏み込んでみたりと実験的な感覚が強い。それ故に独特のデザイン性をKIMONOSは誇っている。それがとても興味深い。
そして3曲目には、「Haiya」を披露。 『「Haiya」はレイ・ハラカミさんにリミックスしてもらいたいと思っていた曲。レイ・ハラカミさんに捧げます』 というMCから繋げられたこの曲では、シティ・ポップ風の曲調に言葉通りに2人の精一杯の歌声が会場に何よりも力強く響きわたった。曲後半の感情のこもった叫びにはダイレクトに心を動かされた人も多いはず。そんないきさつのあるこの曲では、各自が思い思いの感情を抱きながら、聴き入った事だろう。また、KIMONOSが1stアルバムでカヴァーした細野晴臣の「Sports Man」も披露された。
後半となる6曲目「No Modern Animal」からは、白根賢一を迎えての3人編成へ。より力強さとダイナミズムが加わることで、さらにライヴ感のあるパフォーマンスを展開。同曲では三連符のリフ・リズムが効果的に入ってくるのがとてもかっこよい。逆に、「MOGURA」は地を這う様なベースの反復が無くて、逆に少し寂しい感じであった。とはいえ、これもライヴだからこその発見だろう。そして内省に響く深遠なサウンドが続く「Soundtrack To Murder」がまた独特の趣を持っていて妙に曲に引き込まれた。クールでありながらもこの吸引力、さすがである。
ラストには光を纏いながら猛烈な勢いで加速していく「Tokyo Lights」で締めくくり。切り裂くようなリフと歌声に会場は歓喜に包まれたのであった。レイ・ハラカミ氏への想いと共に大きく盛り上げてみせたライヴは、こうして幕を閉じた。
文:伊藤卓也
写真:古川喜隆