ロサンゼルスのかわい子ちゃん達が拡げたミステリアスな音世界
ロサンゼルスのかわい子ちゃん4人組のWARPAINTが昼過ぎのレッドマーキーへ。不安定な天候が続く中、この屋内では背筋が常にゾクっとさせられるようなステージが繰り広げられた。それは、儚いアルペジオと女性三人の歌声によって暗い森の中を彷徨っているかのような感覚にさせられた。
ジョン・フルシアンテもお気に入りというWARPAINTだが、ダークなトーンに包まれた儚く深い音楽を奏でている。選び抜かれた音だけを抽出して、精巧に組み合わせて暗澹とミステリアスな音世界を形成。そのサウンドは、昨年のフジにも出演したTHE XXとも共振するところはあれど、WARPAINTの方が女性3人の代わる代わるのヴォーカル、手数は少ないけど力感のあるドラムがある分、もっとロック寄り。サイケデリックかつゴスな薫りも漂わせ、ただ内省に迫るようなサウンドでじわじわと侵食するような感覚がある。始まりの曲から場内の空気が一気に変わった印象を強く持った。
特にインパクトが大きく、盛り上がりをみせたのはやはり代表曲の「Undertow」。美しいギターと優しい女性ヴォーカルのハーモニーに包まれて彼女たちの持つ世界観が極まっていくこの曲では、会場全体が虜に。視界がパッと開けた曲の中盤からは、うっとりと音に身を任せる他なかった。自らのバンド名を冠した「Warpaint」もまた、暗く深遠なサウンドの上を妖艶な女性コーラスが優雅にも力強く泳ぐさまにずっと聴き入ってしまい、胸を打たれた。ライヴだと”力感”がある分、彼女たちの創り上げる世界がより奥深さと濃さを増すのも興味深い。もちろん、最終曲のようにロックが押し出された曲も新鮮。始まってからずっと異世界に引き込まれているようであった。
なんでもこの日は、ステージ真ん中で演奏していたベース&ヴォーカルのJenny Lee Lindbergの誕生日。メンバーだけでなく、多くの人々に祝ってもらうことができて感激も一塩だろう。WARPAINT自身にとっても記念となる様な初めてのフジロックとなったのだった。
写真:佐俣美幸
文:伊藤卓也