政治的な発言を若者の熱狂にみごとに変換
反原発ソングの「定番」RCサクセションの”サマータイムブルース”に続いてRANKIN TAXIの”誰にも見えない 匂いもない”がSEとして流れる中、満員となったお昼のジプシーアバロンに斉藤和義があらわれた。
「晴れたね」と一言あいさつしたうえで中村達也を招き入れ、斉藤の楽曲”I LOVE ME”からMANNISH BOYSのライブはスタートした。続いて最近レコーディングしたという”猿の惑星”。ウーキキッキと連呼するサビは若干ヤケ気味にも聞こえるのだが曲の内容はシリアスそのもので、洗脳や煩悩から目を覚まそうという呼びかけがやたらと熱い。「自白剤飲ますぞー!」「ばらすぞここで全部!…俺は何も知らないけどね…知っといた方がいいんじゃないかって話でしょ?」とのMCに続いて歌われたのは”バカにすんなよ!”。「ただちに影響はありません…!?バカにすんな!」ではじまった即興部分はますますヒートアップし、「東電の社長の退職金は5億円」「中国の新幹線、埋めてんじゃねえよ」といった発言に場内が沸き立つ。
政治的な発言を若者の熱狂にみごとに変換してみせるMANNISH BOYS。斉藤は自身のヒット曲”ずっと好きだった”を原発を告発する内容の替え歌”ずっとウソだった”に変えてyoutubeにアップロードし、ネットを中心に大反響を巻き起こしたばかりである。他にもユーストリームにて東日本大震災のチャリティーライブを行うなど、現在積極的に反原発を主張しているアーティストのひとりともいえる。しかし、観客の情熱を引き出したのはそうした反体制的な姿勢だけではあるまい。ギターをかき鳴らしながら絶唱する斉藤と中村の猛々しいドラムスが、真っすぐな情熱となって見るものを鼓舞してくるのだ。
「じゃあその、たくさん怒られちゃったやつ」とのMCに続いて”ずっとウソだった”で一体感を盛り上げたあげく、ライブは斉藤による「このあとすごい3人組が出てくるぜ」とのMCで唐突に終了した。そのMCは、フジロック開催後に緊急決定したYMOによる原発についてのトークイベントを指していることは周知のことだったのであろう。客席は大きな混乱もみせず、熱狂的ともいえる拍手でMANNISH BOYSを見送っていた。
写真:花房浩一
文:永田夏来