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7/25 FRIGYPSY AVALON

アトミック・カフェ エセタイマーズ

みんながそう願えば簡単なことさ

かつて反原発や反体制の曲を発売し、ゲリラ的な活動をしていたタイマーズ。忌野清志郎にそっくりなZERRYが率いていたバンドだ。その意思を継いだ形で、差別や戦争反対、震災復興の活動をしているのが、このエセタイマーズだ。昨年9月、新宿で行われた「差別撤廃 東京大行進」のビジョンカーに映し出された映像で話題となった。

定刻15分前に客入りは満杯状態で、会場の後ろのほうまで埋め尽くされている。アヴァロンとしては珍しい光景だ。謎の覆面バンドとして活動しているが、4人のメンバーがそれぞれ有名人に似ていることで話題になっており、一目見ようと足を運んだ人も多いのではないだろうか。私自身、今年3月に日比谷公園で開催された震災復興イベント「Peace On Earth」の映像をみて、そのおもしろおかしいトークや歌を楽しみにしていた。

ヘルメットとサングラスをした、土木作業員風の男がアコースティックギターを持って登場すると会場から歓声がおきる。一言も話さないままギターの音が鳴り、平和と差別についての思いを込めた“イマジン”を日本語で歌う。その優しく真っすぐなメッセージと、気持ちのこもった歌声に観客は引き込まれていった。曲を終えようとしたところで、ウッドベースの男が、「なに清志郎降臨させてるんだよ」とツッコミを入れて曲を止めると、会場に笑いがおきる。

トークの合間に曲を歌う感じで、ライヴは進んでいく。覆面バンドという設定の中、メンバー紹介など軽快なトークが続き、会場は笑いに包まれていく。しかし、トークとは裏腹に曲はどれもメッセージ性が強いものばかりだ。“エセタイマーズのテーマ”では「平和を願っている〜」と歌い、“サマータイムブルース”では「原発いらねぇ」と絶叫。ザ・ブルーハーツの名曲“青空”では、差別について歌う。そして、初披露の“今日を生きよう”では、集団的自衛権による戦争の危険さを訴え、安倍政権をユーモラスかつ真っすぐな言葉で批判する。重たいテーマを、笑いと音楽にのせることで、観客の心の壁を通り抜けてメッセージを届けていく。

曲の途中で観客の一人をステージに上げ、戦争とそれに対する政府への想いを語る場面があった。その話を受けて、サングラスの男が、「戦争は対岸の火事ではなく、どこかで戦争へと進んでしまうポイントがあるはずだから、それを俺たちは止めないといけない」と強い口調で語った。その後“雨を見たかい”、“エセタイマーズのテーマ”で観客を総立ちにさせて、ライヴは終了した。

恥ずかしながら、最初エセタイマーズはただ楽しくやっているおもしろいバンドだと思ってしまった。しかし、彼らは戦争や差別という問題に対して真剣に向き合い、その問題について多くの人に何かを感じてもらおうと、全力でユーモアたっぷりに語り、そして真っすぐな言葉で歌っているのだと気づかされた。

エセタイマーズのメッセージは至ってシンプルだ。平和で、戦争や差別がない世の中にしたい。そういう想いを持つ人が増えてほしい。ただそれだけだ。私たちは普段の生活に追われ、大切なことに鈍感になっていないだろうか。世の中で起きていることに関心を持ち、自分の感性を磨いていこうと感じさせてくれるライヴだった。

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