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7/27 SUNWHITE STAGE

OUTKAST

キャリアを総括した圧巻のパフォーマンス

アウトキャストがフジロックにやってくる。3月に発表になったそのニュースを聞いてフジロック参戦を決めた人も多かったのではないだろうか。約7年も活動停止をしていたにも関わらず、デビュー20周年を祝うために突如として ツアーに出ると発表したニュースは青天の霹靂だった。ヒップホップ・シーンのなかでも特殊な存在感を放ってきたアウトキャスト。それは突き抜けた個性が光るアンドレ3000と超絶テクニックを持つビッグ・ボーイが生み出す化学反応、数々のキャッチーなヒット曲、ソウル、ファンクなどジャンルをクロスオーバーしたスタイルのヒップホップが、ジャンルを超えて音楽ファンを魅了してきたからである。そんな彼らが苗場にやってくるのだ。

安易に「最高だった」なんて書くと陳腐に聞こえてしまうが、ここでは心をこめて言わせていただきたい。本当に最高のステージだった。あの大ヒットチューン“Hey Ya!”しか知らないで見ていた観客は、2人の圧倒的な存在感とキラーチューンの数々にぶっ飛ばされたことだろう。

小雨がなかなかやまない夜のホワイトステージに、アウトキャスト目当ての客が続々と押し寄せる。 開始時間が近づくと、観客が声を上げたり、口笛を吹いたりしはじめ、早くも待ちきれない様子だ。ほぼ定刻に、黒い衣装に身を包んだDJ、バックコーラスの女性2人、女性ベーシストがステージに現れ、大歓声がわき起こった。続いてスクリーンにアルバム『Stankonia』のジャケットになった白黒の星条旗が映し出され、待ちに待った2人のラッパー、アンドレ3000とビッグ・ボーイが登場した。そして観客が狂喜乱舞するなか、その『Stankonia』収録のヒット曲“B.O.B”“Gasoline Dreams”を立て続けにぶちかましてきた。見渡すかぎりの人々が嬉しそうな笑顔で、手を上に上げ、一緒に歌っている。どれだけアウトキャストの来日を楽しみにしていたのか一瞬で分かった。

アンドレは胸の部分に「God. Or God?」とプリントされた黒いつなぎに、白いウィッグ、白ぶちのサングラスをかけ、一方のビッグ・ボーイは不思議な柄の上下揃いのシャツとハーフパンツ。相変わらず見た目は全然かみ合っていないけど、2人の歌うようなラップのユニゾンや間の取り方の相性はやっぱり抜群だ。そしてブランクをまったく感じさせないアンドレとビッグ・ボーイのラップが、当たり前のように上手い。圧倒的な存在感だ。

“Rosa Parks”を演奏した後に自らを自己紹介。さらに“Aquemini”へとたたみかけるとアウトキャスト第三のメンバー、スリーピー・ブラウンが登場し、ファンを沸かせた。彼らに最初のグラミー賞をもたらしたヒット曲“ Ms. Jackson”を終えると、2人それぞれのソロタイムに入る。2003年のモンスターヒットアルバム『Speakerboxxx/The Love Below』からの曲を演奏するためだ。まずはビッグ・ボーイが“The Way You Move”を含めた3曲をプレイ。観客は体を横に揺らしたり、両手を左右に大きく振ったりして楽しんでいる。お次はアンドレの出番。みんなが待っていた大ヒットシングル“Hey Ya!”のときにはラッキーなフジロック女子9人がステージに上げられて、ホワイトステージが一大ダンスフロアと化した。

2人のソロセットが終わると今度は「ここに本物のアウトキャスト・ファンはいるか?」とオーディエンスに問いかけ、1stと2ndアルバムからの曲をやり始める。結成20周年を祝うツアーだけあって、こうした昔の曲をやってくれるのも嬉しい。終盤に入り、キャッチーな“Roses”や“So Fresh, So Clean”などをプレイするのを聴きながら、改めて彼らの持ち曲にキャッチーなキラーチューンが多いことに感嘆する。

「残念だけどもうすぐ終わりなんだ」と名残惜しそうに話しつつも、最後の曲をプレイする前にアンドレはこう言った。「俺たちは黒人のために音楽を作っているわけじゃない。白人のためでも黄色人種のためでもない。俺たちはみんなのために音楽を作っているんだ。みんなっていうのはつまりこの世界中の人たちのことなんだ」するとスクリーンには青い地球が映し出され、“The Whole World”がかかった。オーディエンスから一斉に手が挙がる。サビの部分で大合唱になるとともに、スクリーンには満面の笑みで歌うホワイトの観客たちが写り、アンドレは「みんなのための歌なんだ」と言わんばかりにスクリーンへ両手を掲げて歌っている。アウトキャストらしい愛の溢れるパフォーマンスに感無量だった。

途中銀ギラの衣装を着た男がステージに乱入するハプニングもあったが、アンドレとビッグ・ボーイは20年のキャリアを総括するような、ブランクをまったく感じさせない圧巻のパフォーマンスでホワイトを沸かせてくれた。アウトキャストを今年のベストアクトに選ぶ人は多いだろう。ヒット曲から昔の曲まで完全に網羅したセットリストに、アンドレとビッグ・ボーイの超絶ラップ、ファンには嬉しいスリーピー・ブラウンの登場。完璧だった。はっきり言って、見られなかった人は後悔した方がいい。

セットリスト
Intro
B.O.B
Gasoline Dreams
ATLiens
Skew It on the Bar-B
Rosa Parks
Da Art Of Storytelling Part. I
Aquemini
SpottieOttieDopaliscious
Ms. Jackson

Big Boiソロ
Kryptonite
Ghetto Muzic
The Way You Move

Andre3000 ソロ
Vibrate/She Lives In My Lap
Prototype
Hey Ya!

Hootie Hoo
Crumblin’ Erb
Southernplayalistic
Player’s Ball
Elavators (Me & You)
Roses
So Fresh, So Clean
Int’l Players Anthem (UGK)
The Whole World

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