加藤登紀子&ズクナシ
ソウルウーマンはジャンルを越えて
真剣にステージを見つめる人もいれば、ステージ横でまったり聴く人、座敷で食事しながら聴く人もいる。そんな”小さな街”のような雑多な雰囲気が、苗場食堂最高の舞台装置だ。
さて、毎日、意表を突くコラボレーションが見られるこのステージ。初日のトリは、シルバーラメのワンピースがシュープリームスを彷彿させる、日本では(いや世界でも?)稀なウーマン・ソウルバンド、ズクナシ。’06年にはルーキー・ア・ゴーゴー、’09年にはアバロンに登場した彼女たちは、今年の春、3人体制でリスタート。サウンドはソウル、精神はパンクなステージを展開。「ズクナシとしてはサクッとやって、登紀子さんと音楽をしたいので」とボーカル&ギターの衣美が、加藤登紀子へのリスペクトを語る。
オーディエンスも一緒になって「トッキー!」コールをすると、真っ赤な革ジャンとボリューミーなロングスカートに奇妙なサングラス?といういでたちで登場。ズクナシと楽しむために作ったという新曲”から揚げ時代”を披露する。ひたすら”カラアゲ”が連呼されると、今日もから揚げ食べたけど、今もまた食べたいなあなんて、くだらないことを思い出してしまうけれど、生活の中で大事なことをユーモアに包んで表現した二組ならではのコラボナンバーだった。
そして、「もう1曲は今日のためにとっておいた曲。一昨年、ここでやったオンダ・バガでバカみたいに乗っちゃって、アルゼンチンにラブコールを送って、彼らの曲を日本語でカバーすることになったの」と、嬉しそうに”Tatarali”を、ズクナシ、そして細井豊、武川雅寛という超レアな面々で演奏。アルゼンチンのフォルクローレも、加藤登紀子の声を通すともっと広義なフォークソングになる印象で、オリジナルと言われても気づかない相性の良さだ。
オリジナル新曲からゴスペル的な”愛を耕すものたちよ”も披露され、ズクナシのメンバーのコーラスにも感銘を受けていると、たまたま大きなリアクションをしている20代後半ぐらいに見える白人男性を発見。演奏がフィニッシュした時点で
涙を拭っていたのに目を奪われた。ステージ上もそうだけれど、オーディエンスの反応もつぶさに見られる、それも苗場食堂の他にはない素敵なところだろう。
すっかりフジロッカーズの新たなミューズになった登紀子さん。土曜日はフィールド・オヴ・ヘヴンに登場、新たな語り草になるライブを期待したいところだ。
posted on 2014.7.25 23:50
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