PRESERVATION HALL JAZZ BAND
ニューオーリンズ仕込みの底抜けの楽しさ
伝説のキャバレー”ムーランルージュ”をイメージしてつくられたカフェ・ド・パリ。フジロックの数あるステージの中でも一際目立つ存在だ。これからこのステージに登場するのは、ニューオーリンズの伝説の老舗ジャズハウス専属のバンド、プリザヴェーション・ホール・ジャズ・バンドだ。
実は、今年の3月にニューオーリンズのプリザヴェーション・ホールで彼らを目撃していることもあり、地元を離れたここ苗場ではどんなステージを繰り広げてくれるのか、本当に楽しみにしていた。会場に到着したころ、外は強めの雨が降ってきたためか、屋根のあるハコであるカフェ・ド・パリへ多くの人が流れていた。
この会場の支配人と思しき紳士(という設定だろう)が、バンドの紹介をしてメンバー8名がステージに登場。ニューオーリンズの文化を育んだ歴史的な通りを冠した”Bourbon Street”で本ステージの火蓋が切って落とされた。アメリカの古き良き時代を感じさせる、いかにもなニューオーリンズ・サウンドとグルーヴがのっけから繰り出される。トロンボーンのFreddie Lonzoと、クラリネットの、時折見せる笑顔がなんとも愛らしいおじいちゃん、Charlie Gabrielがそれぞれ軽快のソロをきめまくる。中央のトランペット奏者のMark Braudはそれぞれのソロの後紹介を丁寧に行うのだ。そのやり取り、そして紡ぎだされる音ひとつひとつにフロアのオーディエンスは笑顔で手を叩き、リズムに体を揺らし応えている。のっけからおくられる割れんばかりの拍手喝采に、メンバー全員がとても満足げな表情を浮かべていた。
Markが床を足踏みして合図をとり、”St. Louis Blues”がはじまった。この曲のハイライトはテナー・サックスのClint Maedgenによる流麗なソロパートだ。なぜこうもサックスはかっこよく響くのか。かっこよすぎて嫉妬をしてしまうほどだ。続く”Trombone Freddie”ではタイトルとおりにFreddieがトロンボーンを乱暴に上下させながらソロをぶちかます!これで腰が動かないような輩はここには一人もいない。
恰幅ののいい、スーザフォンのRonell Johnsonがトロンボーンに持ち替え、ブルージーな声で汗を飛ばしながら”Halfway Right”を歌い上げれば、Markが手拍子でバンドに合図をとりながらはじまった”El Manicero”ではMarkがカウベルを、Charlieおじいちゃんがタンバリンを叩き、刻まれるビートにアクセントをつけ巧みな展開を見せつける。
個人的な本ステージのハイライトは、続くロックンロール然とした勢いで疾走する”Dippermouth”だ。Charlieおじいちゃんが、まるでロックバンドのギタリストが前にでて来てソロをかますかのごとくクラリネットを吹きまくるではないか!Charlieに続けとばかりにサックス、ピアノ、トランペットそれぞれがキメキメのソロを披露し、会場のボルテージは最高潮に達した。そのままドラムをドカドカうち鳴らせば、バンド初のオリジナル・アルバムである『That’s It!』タイトルトラックの”That’s It!”が重厚にはじまった。ベーシストにして本バンドのクリエイティブ・ディレクターであるBen Jaffeがカウベルを、テナー・サックスのClintがタンバリンを叩きつけ、ビートを強力に補強し、ピアノのRickie Monieがピアニカに持ち替え、マイクに向かって吹きまくり、バンドはここ一番のグルーヴ感を放出し尽くして本セットを締めくくった。
ある記事でBen Jaffeがこう語っていた。「私たちがニューオーリンズで音楽を楽しむように、世界中のみんなが音楽を楽むことができれば、存在する世界の多くの問題を解決できると信じている。」と。会場に居合わせた我々は、間違いなくニューオーリンズで彼らが楽しむように、いやそれ以上にここ苗場で音楽を存分に楽しんだと胸をはって言えるだろう。外へ出ると、雨がすっかり上がっていた。本当にすがすがしい気分だ。
-Setlist-
Bourbon Street
St. Louis Blues
Trombone Freddie
Halfway Right
El Manicero
Dippermouth
That’s It
posted on 2014.7.27 19:10
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