THE BLOODY BEETROOTS LIVE
最強で最狂で最凶で最悪で最高!!
ザ・ブラッディー・ビートルーツは2日目の深夜レッドマーキーに出るためのバンドだったのではないか? と思うくらい時間帯やシチュエーションが完全に合致していた。お客さんたちが一番元気でたくさんいるときに出演できたという「引きの強さ」が感じられる。
レッドマーキーはお客さんたちが詰めかけていた。開演予定時刻の深夜1時になってもなかなか登場しないので、ステージ前のお客さんたちは「オーレー、オレオレオレー」とサッカーのチャントのように合唱を始めた。何で? そんな疑問もどうでもよくなるくらい声が大きくなった。バンドの出身国であるイタリアの旗が振られていた。
ステージには、下手からキーボード、グランドピアノ、ドラムセットが配置され、ステージ背後にはバンド名のロゴが電飾で光るようになっている。ようやく登場し歓声が大きく湧き起こる。1曲目”Spank”からいきなり持っていかれた。昔のアシッドハウスのような強烈なシンセ音と重たいダンスビートでフロアは一斉に踊りだす。遠目だしライトが逆から当たることが多いのでよくわからないけど、覆面をした3人のメンバーのうち、グランドピアノ&ギター担当の人が主にお客さんたちを煽る、デスヴォイスぽい声で叫んだり、フォトピットの柵まで身を乗り出してお客さんに近づこうとする。
ライヴといえども、基本曲と曲はシームレスにつながっている。次の”Rocksteady”もグイグイ攻めてくる90年代初頭を思わせるようなシンセサイザー音が乱舞するダンスミュージックである。お客さんたちの盛り上がりがすごい。これを待ってた感がすごい。こういう頭がイっちゃっているヤバい音を待ってたのだ。時代とかそういうの関係なく「ぼくのかんがえたさいきょうのあしっどはうす」をなんの衒いもなくやる、この堂々とした態度を待っていたのだ。
と、思ったらいきなりロックンロールが流れてきた。ギターを持ってそれ風にしているけど、これが生音かどうかはわからない。ドラムは生音っぽいけど。でも、そんなのは関係ない。いきなり高速のロックンロールが流れてきて頭の処理が追いつかないまま踊る。ただそれだけ。そうかと思ったらへヴィメタルみたいになって「何で?」という疑問も置き去りにされたまま強烈なギター音と激しく叩かれているリズムに体を合わせていく。そして、アシッドハウスに戻ったり、ギターロックぽくなったりと目まぐるしい。それでいてお客さんたちの一体感がある。歌詞による共感とかバンドのストーリーへの思い入れとか関係なく生み出される一体感。そして多幸感。目の前でとんでもないことが起きている、ということだけはかろうじてわかる。
そして”Volevo Un Gatto Nero (You Promised Me)”がこの日のハイライト。”Volevo Un Gatto Nero”とはイタリアの童謡で、日本でいえば「黒猫のタンゴ」である。この歌はイタリアでは「ぼくは黒猫がほしかったのに、白猫をくれた。嘘をついたからもう遊んであげない」という内容だ。これがブラッディー・ビートルーツにかかれば「黒猫がほしかったのに、俺に白猫をくれた嘘をつきやがってこの○ック○ー!!!」という咆哮になる。子供の声のサンプリングから凶悪なシンセ音が入り、それがへヴィメタルなギターのリフに変わっていく。もう何が何やら。この最強で最狂で最凶な音に狂わされたお客さんたちは、2時ころにバンドが一旦下がってアンコールぽく残り15分までたっぷりと踊り狂ったのであった。
posted on 2014.7.27 01:00
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