the LOW-ATUS
「おじさんの井戸端会議」はこんなにも楽しく熱い
「相手を油断させるためにメガネキャラになった」という風貌のTOSHI-LOWと、揃いで着る予定だった東北ライブハウス大作戦」の前掛けとTシャツとうっかり忘れてきてしまったという細美武士(着用しているTシャツはスタッフから借りたもの)によるスペシャルユニット、ザ・ロウエイタスは、TOSHI-LOW曰く「おじさんの井戸端会議というジャンル」というステージをジプシー・アヴァロンで繰り広げる。
「1曲目で、3分の1ぐらいしかお客さんが残らないと思う」と2人がアコースティック・ギターで弾き語りしたのは、フォークシンガー高田渡の”自衛隊に入ろう”のカバーだ。彼らのコミカルだがどこか物悲しい歌声に、ジプシー・アヴァロンいっぱいに集まったオーディエンスは静かに聴き入っていた。
歌い終えると、「もうさ、フジロック出たんだから飲んじゃおう」と2人はステージ上で乾杯。「『原子力』という単語の入った曲を」と細美が語って演奏したのは、かつてジョー・ストラマーもカバーしたボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの”Redemption Song”だ。TOSHI-LOWが日本語詞を朗読し、2人で優しく大切に歌い上げる。彼らがどれだけ原曲に強い思い入れを持っているかが伝わってくるカバーだった。
細美が新バンドMONOEYESでソウル、台北、東京という三都市を回るツアーを行うという告知から、TOSHI-LOWが二丁目で会った男性のこと、a-nationの話、細美が親しくしていた韓国のザ・コックスのメンバーが兵役に行ったこと、そして「ミュージックステーション」に出演した横山健がカッコ良かったという感想から細美が「酒乱」の十段を持っているという話まで、「おじさんの井戸端会議」は先ほどのアトミック・カフェ トーク以上に軽快に繰り広げられていく。
フォーク・クルセイダーズの”イムジン河”のカバーをしっとりと歌うと、「このペースだと絶対タイムテーブル通りに終わらない!」とようやく気づき慌て出す2人。持ち時間は残すところ後5分だが、現状まだ予定していた8曲のうち3曲しか歌っていないのだ。「ホントは(残り)何分? 良いじゃん、ちょっと。もうセッティング始めていいからさ。ダイスケはん(津田大介)なんかと喋ってなきゃ良かった」と言い出すTOSHI-LOWに、「じゃあ、後2曲やろう」と細美。「大丈夫だよ、別に。アヴァロンだもん、大丈夫だよ。グリーンじゃダメだよ? グリーンに出た時はちゃんと時間を守ろうな」などとTOSHI-LOWがとんでもないことを言い出しながら、彼が日本詞を付けたクリーデンス・クリアウォーター・リバイバルの”Have You Seen The Rain”を細美が歌う。途中、ギター・ソロが危うくなったTOSHI-LOWは、「グリーンに出るまでにソロ練習してくるわ」と苦笑いだった。
「我々はまた神出鬼没で、いろんなところでダラダラと酒を飲みながらライヴをやるので、ちょっと楽しかったなと思ったらまた見に来てください。たまに、3時間半ぐらいひたすら喋る日もあるので(笑)」と細美。「熱中症に気をつけて、楽しいフジロックを過ごしてください。ザ・ロウエイタスでした」と最後に歌ったザ・ブルーハーツの”青空”では、フィールド中に大歓声とハンドクラップが巻き起こった。演奏した5曲のほとんどが反戦歌だったザ・ロウエイタス。トークは爆笑と失笑の嵐だったが、2人の歌声はアヴァロンから溢れるほど集まったオーディエンスの胸に温かい余韻を残してくれた。