ONE OK ROCK
"野生動物"に仕留められたグリーンステージ
「声をかけてもらったときにどんなライブをしたらいいんだろうと思ったんです」
中盤以降にTaka(Vo)が発したこの言葉から、彼の1本1本のライブに賭ける真摯さが伝わってきた。このバンドの偉大さは前進するためにどんな状況でも正直であることだと私達に教えてくれる。もちろん、ある意味「勝つため」のビジョンを積み上げなければ意味はないのだが。
アルバム『35xxxv』のオープニング”3xxxv5”が流れる前からTomoya(Dr)は位置に付き、他の3人も前のめり気味にステージに登場。4人が4人とも野生動物のような目をしている。こんな強い目をしたロックミュージシャンというか人間を久しぶりに見た、と思った。金髪ショートになったTakaは、今日はトレードマークの赤いマイクシールドではなくコードレスなのも新鮮。そしてアルバム同様”Take Me To The Top”の第一声が発された瞬間のグリーンの騒然とする感じ…モッシュピットに詰めかけたファンはもちろん、遠巻きに見ているオーディエンスも一様にステージ上を真剣に見つめている。グリーンステージに熱風が吹いたような体感だった。
“Deeper Deeper”ではTakaは花道まで出てきてグリーン全体を煽り、Toru(G)はカンフーマスターの如く、ターンしながらリフを刻む。しなやかな動きはサウンドとビートにリンクして、ONE OK ROCK初のフジロックというストーリーを描いているようにも見えてくる。
TakaのMCが丁寧語なのは知られた話だが、今日もさかんに「フジロックの皆さん」と、このフェスティバルに対する彼なりのリスペクトを表わしていたのが印象的。たとえば「フジロックの皆さん、初めまして、私達がONE OK ROCKです。毎年来てる人たちは、なんで今年ワンオクなの?と思ったかもしれませんが、ついにこの地に立てました。僕らの心は興奮でいっぱいになっています!」とか、「音も大きいし、自然の中だし、音楽やる身としては幸せな気持ちです。このまま3日間、楽しんで行ってください!」と、その場にいるオーディエンスの気持ちをステージパフォーマンスともにMCでも”解錠”してしまった。
“Stuck In The Middle””Cry Out”など、ラウド/エモ流のドラマティックなハードチューンをたて続けにプレイし、バンドのフィジカルの強さを十分に堪能させた後は、限られた時間の中、バラードでONE OK ROCKの魅力のアザーサイドを響かせる。Takaがアコギで弾き語りで、その独特のR&Bシンガーにも近いエモーショナルなボーカルを聴かせると、「バラードがいいね」と言っている大人の男性もいて、ついついオーディエンスの反応も目で追ってしまう。言わば今の彼らの音楽性は完全にUSのメジャーシーンというか、スタジアムロックバンドの標準装備だ。そういう意味ではきちんとRyota(Bs)とTomoya(Dr)の重低音がラウドかつ分離のいい音でフジロッカーズに届いたのは会心の出来事だと思う。
再び眼光鋭くハードチューン”The Beginning”に突入していった4人は、やはり獲物を仕留めようと演奏で万単位のオーディエンスと駆け引きする野生動物だ。フロントの3人が花道の最前に出てきてヘッドバンギングする姿に否応なくブチ上がり、トドメを刺すように誰もが知るあのカタルシスの塊のような”Mighty Long Fall”を歌えようが歌えまいが、皆叫ぶ。エンディングに向かって、Tomoyaのツインペダルがまるで雷鳴のようにとどろき渡ったのだが、彼が現実の雷雨の代わりにグリーンステージ全体に雷神として降り立ってくれたのかもしれない。
結局は好きか嫌いかどっちでもいいか、なのかもしれない。でもONE OK ROCKというバンドにはシンプルな真理がある。それはそのライブに接した人を「かっこよくなりたいな」と一瞬でも思わせるパワー、それに尽きる。初、フジロック、見事だった。