加藤登紀子 with Love Farmers
明日への活力を!
昼下がりのフィールド・オブ・ヘブン。パン屋のルヴァンに並ぶお洒落な女の子たちや、服を物色するヒッピー風の出で立ちの人たちが行き来し、いつも自由な雰囲気に満ち溢れている。朝から重たく降り続いていた雨も今は完全に止んでいる。ヘブンの代名詞的な存在であるお登紀さんこと加藤登紀子の登場を喜んでいるかのようだ。
開演時刻になるとお登紀さんを除く、バンドメンバーがステージに姿を見せた。お登紀さんの次女のYae、キーボードのYANCY、サックスのクリス・ハリントンに、リズム隊のズクナシからなるLove Farmersというスペシャルなバンド陣ががっちりとお登紀さんを支える。一斉に”富士山だ”の音を出力しライヴがはじまった。お登紀さんがにこやかにステージに登場すると、フロアにパッと笑顔の火がともる。
クリスのサックスの音色が楽しさを倍増させる軽快な”富士山だ”。「誰でも誰でも富士が好き!」とフロアにコール・アンド・レスポンスを求める。これは明らかにフジロックの歌だ!「2006年に出させてもらってからというもの。フジロックに来るのが一番の楽しみになりました。」と続く軽快な”Freedom”を高いテンションでステージを縦横無尽に行き来しては歌い上げるのだ。楽しくて仕方がないって感じだ。
ステージの趣は一転し、未来は真っ暗だけど、自分から光るしかないと主張する”Now is the time”、ジョン・レノンの言霊を力強く届ける”Power To The People”、東日本大震災の被災者の方々のために書き下ろした応援ソングの”今どこにいますか”とメッセージ性の強い楽曲が続く。個々の曲が持つ優しさ、暖かさに思わず目頭が熱くなってしまう。
そして、Yaeが曲を書き、詩をお登紀さんが担当した”名も知らぬ花のように”。東日本大震災の日、3.11に産まれた子供達を讃える曲。失われたものだけじゃない。産まれた大切なものもいっぱいあるんだ、ここからまたはじめなきゃ!と訴える。しんみりと、感動的にYaeの歌声が会場に響き渡る。クリスが吹くフルートの物悲しい音色と、お登紀さんの爪弾くアコギの優しいしらべに、会場は一層の感動包まれた。
ラストに加藤登紀子 with Love Farmersの名刺代わりの1曲”愛を耕すものたちよ”を披露し、ステージを後にした。いわゆる「ライヴ」という次元をはるかに超えたステージだった。今、自分が何ができるか、何をやるべきなのか。この場に居合わせた人たちは、明日への活力をもらえたことだろう。
-Setlist- *ライターメモ
富士山だ
Freedom
Now is the time
Power To The People
今どこにいますか
名も知らぬ花のように
愛の讃歌
Never Give Up Tomorrow
愛を耕すものたちよ