BOOM BOOM SATELLITES
夕暮れの空に放たれた音たち
ホワイトステージ上部にあるスクリーンに映し出された川島はまるで祈っているかのような顔をしていた。
2012年のグリーンステージに出演して以来、3年ぶり9回目のフジロックとなるブンブンサテライツは、彼らのホームというべきホワイトステージに帰ってきた。そのことを「生還」と呼んでしまうような、ヴォーカル&ギターの川島が患った脳腫瘍の手術がその間にあって、ファンたちはその経緯を知っているわけだから、始まる前には帰ってきた川島を迎えるべくホワイトステージを多くの人が埋めていた。
夕暮れのなか、バンドが登場する。サポートのドラマーである福田洋子とギターのサポートとして山本幹宗がステージに立つ。メンバーたちは黒っぽい衣装、最近のライヴでは、ずっとそうだけど遠目からは女性にも見えなくもない中野の衣装が特徴的だった。
まずは「A HUNDRED SUNS」から始まる。崇高さを感じさせる。これから始まるステージは、生きていることに対しての祈りなんだと。バンドとお客さんたちによって夕暮れの空の下で捧げられたのだ。
ライヴは従来のブンブンサテライツのイメージである、「ロックとダンスの融合」といわれた攻撃的で、音圧の高い曲が「モーニング・アフター」(もちろん非常に盛り上がった)くらいしか演奏されなかった。「MOMENT I COUNT」も「Kick It Out」も「DIVE FOR YOU」も「EASY ACTION」もなかった。あとは、「NINE」など、スローでスケール感の大きい曲で野外の開放感には非常にマッチする曲を並べてきた。音圧の高いダンスミュージックを求めている人も少なくないだろうが、ブンブンサテライツはあえて思い切った挑戦をフジロックでおこなっているのだと感じさせた。かつてはベーシストだった中野もベースよりギターを持つ時間が長くなり、この日のライヴでは1:9でギタリストだった。そのため、川島、中野、サポートの山本の3人が同時にギターをかき鳴らすこともあり、その結果、まるでシューゲイザーのようにギターによる音の厚みができていた。
終盤、「FOGBOUND」では、福田洋子の細腕から叩かれるパワフルなドラムと中野が機材を操って出してくる音との対決が、機械に立ち向かう人間という構図を感じさせ面白かった。そして最後は「STAY」。この曲で獲得したスケール感を以降のブンブンサテライツは進化させたのだといえる。そしてそれが今回のフジロックで結実したのだった。
川島は感謝の言葉を述べ、最後はステージ端にメンバーが集まり、客席を背にして記念撮影をおこなった。今度はグリーンステージでも、その音を浴びたくなった。