BELLE AND SEBASTIAN
ベルセバはダンスミュージックである。
アンコールのときに後ろを振り返ったら、人がぎっしり入っていた。いつからそんなになったかわからないけど、おそらくMUSEが終わって、アンコールだけでもベル&セバスチャンを観ておこうと思った人も多かったのだろう。そして終わったあとには幸せな空気に包まれていた。それが2曲くらいしか聴いていなかったとしても、それを感じることができたのではないだろうか。
フジロック2日目、ホワイトステージのトリを務めるベル&セバスチャンには、グリーステージのMUSEが異常に混んでいるのにも関わらずかなりの人たちがいた。それでも、始まるときは後方に余裕はあった。幸い2日目は雨も降らず、夜はいい感じに気温も下がり過ごしやすくなっていた。
22時10分、スクリーンに新しいアルバム『ガールズ・イン・ピースタイム・ウォント・トゥ・ダンス』のジャケットに映っている女の子がでてきてバンドを紹介する。そして「Nobody’s Empire」からライヴがはじまる。ステージ上に設置されているスクリーンには、さまざまな古い写真や歌詞の一部などが映し出されていた。スクリーンは曲によってステージを映したり、イメージ映像を流したりしていた。
ステージには、いつものように大勢の人がいる。スチュアート・マードック(ヴォーカル、ギター、キーボード)、スティーヴィー・ジャクソン(ギター、ヴォーカル)、リチャード・コルバーン(ドラム)、クリス・ゲッズ(キーボード)、サラ・マーティン(ヴァイオリン、ヴォーカル、キーボード、ギター)、ボビー・ギルディア(ギター、ベース)の他、キーボードにもうひとり、ギターにもうひとり、そして日本からトランペット1人とヴァイオリン4人のサポートメンバーがいた。これも1曲目が始まった時点での編成だった。曲によって日本人のサポート・プレイヤーたちはステージ袖に下ることもある。バンドには、マルチプレイヤーが多く、楽器を曲ごとに交換したり、チェロなどを出してきたりと目まぐるしく変化していく。
2曲目に東京や原宿を歌い込んだ「I’m a Cuckoo」で軽快に客席の身体を揺すらせる。ステュアートは、「ワタシタチハ、ベル・アンド・セバスチャンデス。パーティーのジュンビハ?」と「The Party Line」。ベル&セバスチャン流のダンスミュージックでスクリーンには、アニメーションのクラブで踊っている人たちのシルエットが次々映し出されていく。
ファーストアルバムから「Shes Loosing It」、これも軽快に踊らせる「I want the world to stop」と続く。ステュアートは「スティーヴィーは荷物をなくして服はH&Mで買った」とか笑わせ、「Perfect Couples」。終盤でステュアートはハッピー・マンデーズの「24 Hour Party People」を引用して歌う。
曲は古いものから新しいアルバムからのものまで幅広く選曲された。なんというか、ベル&セバスチャンってダンス・ミュージックなんだなと思えるくらい踊れる曲が多かった。フジロックの中日(なかび)のホワイトステージのトリという時間帯を考えれば、しんみりとした曲で連発して終えるのではなく、楽しく踊らせた方がいい。新しいアルバムはそういったダンス志向を前面に打ち出したものだけど、今回のステージでは過去曲をひっくるめてベル&セバスチャンはこういうバンドであるということがわかったのではないか。しかも、楽器編成の妙もあり、あまりハードにエレクトロしていなくて、あくまでも感触はソフトで、ナチュラルな手触りで、淡々としていて、親しみやすくなっているのだ。
毎回そうだけど、この日もステュアートの自由さが際立った。ボーダーのノースリーブのシャツを着て(ボーダーシャツを着ているサラと並ぶとペアルックにみえてしまう)、踊ったり、MCで笑わせたり、そして歌いながらステージから降りて、客席の女の子からマスカラをつけてもらい帽子を借りて被る。さらに、「The Boy with the Arab Strap」では、大勢のお客さんたちをステージに上げて(30人くらい? もっとかも)踊らせたり(中のひとりが異常に上手かった)、ステュアートと一緒に撮影したり、たくさんの人たちが自分の帽子を次々と被せ、眼鏡を掛けさせる。続く「Legal Man」まで自由な宴がステージで繰り広げられていて、大勢のひとたちがいて騒いでいるにも関わらず、スチュアート以外は淡々と演奏を続けているが面白い。ステージの人たちを客席に戻らせて「Judy And The Dream Of Horses」ここはクールダウンさせて締めくくる。
アンコールは「Get Me Away From Here, I’m Dying」と「The Blues Are Still Blue」だった。スチュアートは早い再会を約束しながら去っていった。