GLIM SPANKY
笑わないフロントウーマンの野望
ジャニス・ジョプリンを思わせるとか、10年に一度の声とか、手垢の着いた形容詞はもういい。
<古い奴らの 古いやりかたを 批判すんのは 簡単だろう>、こんな刺さる言葉を全力で投げるような歌声とソリッドなビートで届けられたら、年齢関係なく反応するのがロックファンだろう。
ともに平成生まれの松尾レミ(Vo/G)と亀本寛貴(G/Cho)が登場するだけで華がある。松尾もギター/ボーカルなのがクールだ。ほとんど笑わない。「ありがとう」の一言もすぱっと言い切る。
フジロック初出演の1曲目としては、たくましささえ感じるミディアムチューン”焦燥”でスタートしたステージ。でもたぶん、10代の頃の先が見えない時期のこの歌で始める必要があったのだろう。ただひたすらに歌に気持ちを入れ、正確なカッティングでグルーヴを作る彼女を見ていると、まったく浮かれたフシがない。いや、今この瞬間がどれだけ大事なのか分かってるからなんだろう。衣装さえ違えば、イマドキのドリームポップ・バンドのメンバーだと言われても違和感のないイケメン・ギタリスト、亀本も「マジか」と言いたくなるほど、ぶっといソロと切れ味鋭いリフを弾き倒す。今、最もレスポールが似合う20代かもしれない。しかも曲ごとに二人ともギターチェンジして、曲ごとに細部までアレンジされたサウンドにぴったりのアンサンブルを作っていくのだ。別にノンストップで畳みかけることもない。一番伝えたいのは歌を軸にしたGLIM SPANKYというメッセージだからなんだろう。
入り口としてのカバーという意味なのだろう、ジャニスの”MOVE OVER”のも披露してくれたが、やはりアッパーな8ビートで、今のロックンロールにアップデートされたハードドライヴングな”褒めろよ”での演奏と松尾の突き抜ける声が痛快だった。ドラマ「太鼓持ちの達人〜正しい☓☓のほめ方〜」の主題歌というお題ありきだったとは言え、自分が望む場所を見据えたら、瑣末なことなんてどうでもいいんじゃない?というちょっとシニカルなこの歌のリアリティは、どうも周りを見渡す限り、女の子によりウケがいいように見えた。
笑わない松尾が最後の最後に「朝からみんなおはよう。人生二度目の夏フェスがフジロックのレッドマーキーで光栄です」と初めて笑顔で感謝を述べ、今春、大学を卒業したばかりだと告げると驚きの声も。ラストナンバーは、大人になっても瞳に輝きを失わない人でいたいという歌だと伝え、「GLIM SPANKY、日本語で世界に勝負をかけていきたいと思ってます!」と、彼女たちの本気度を”大人になったら”に込めて、締めくくった。