オシリペンペンズ
狂気、シュール、カオスティック!
開始早々、脳みそを模した被りものを頭に乗せる、冴えない上下赤ジャージの男の出現。何をし出すのかと思えば、マイクを口に含みながら、苗場食堂の手作り感満載のステージ下手の柱をよじ登り、テントの上に寝そべる。オシリペンペンズ、石井モタコ(Vo)だ。その姿に、観客からは比較的野太い「モタコー!!!」の声と笑いが巻き起こる。これからどんな破天荒なライブを、私たちに見せてくれるのだろうか。
まずは、”ゴリマッチョや”グットモーニング”、”パンツをかぶって走り出せ”と、タイトルからしてツッコミどころ満載で過激なのだが、「ゴリラが ゴリラが ガリレオ・ガリレイ」とか「自殺も中々踏ん切りがつかない」と、シュールで音数の少ない中村キララのギターと道下慎介のドラムに乗せて、ステージ上で歌われるものだから、頭から離れないじゃないか!
曲も曲だが、モタコが自由にステージを動き回るカオスなライブは、他のアーティストたちといい意味でも悪い意味でも一線を画していた。天井から吊るされるマイク。バスドラに乗るモタコと見つめ合いながらビートを刻む道下。喉に手を突っ込んでステージ上から吐こうとし、全力で逃げ惑う観客。「フジロックにいる女の子、全員可愛く見えるよね。でも、コンタクトしてないから、近づいたらモンスターみたいな顔してたわ!」と笑いを誘う場面も見られた。
“カリスマ木魚”ではステージと観客が一体となり「素敵な木魚」「フー!!!」という声。”モタコの恋愛必勝法”では、「3日だけ付き合って」「3日で駄目なら2日でどうだ!」という歌詞では観客も指を3や2にしたりと、まさかこのライブでミューズが演奏しているだなんて思えないほど大盛り上がり。
あの凄まじいライブは一体何だったのだろう。曲にインパクトも然ることながら、なんだか珍しい奇劇でも見ているような気分になった。苗場食堂を去るお客さんからは、「モタコ、ちょっと大人しかったよね。」との声が聞こえた。え?普段はもっと凄いことしてるの…?