TICA feat. TOSHI-LOW & YOSSY LITTLE NOISE WEAVER & mabanua
コーヒースタンドと音楽の豊穣な関係
ライブスタートの少し前からTOSHI-LOWの声が苗プリの裏辺りまで聴こえてきたので、ピラミッドガーデンに急ぐ。が、実は入念なリハーサル中だったようで、遅い時間ではあるが何か少し食べようと思いたち、スパイシーチキンを所望。これが丁寧に調理されていて絶品だったので、最終日に彼の地へ向かう人はぜひ。
ステージにこのエリアを担うキャンドル・ジュンが登場し、これから始まるTICAとの縁についてのMC。新潟県中越地震の支援のために起ちあげた「SONG OF THE EARTHフェスティバル」で繋がったアーティストにピラミッドガーデンにも出演してもらっているのだが、TICAの出演は、あの美味しいコーヒースタンド”Little Nap”での出会いが発端らしい。一見、意外だが、だからこのステージに出るアーティストたちは既にプライベートでも知人同士ということなのだ。
この日はTICAのふたり、武田カオリ(Vo)、石井マサユキ(Gt)に加えYOSSY LITTLE NOISE WEAVERも加えた編成で、武田の涼しげで穏やかな美声と、キャンドルの灯りが最上級に心地よい”Johnny Cliché”からスタート。icchieのミュートしたトランペットがジャジーだ。
続いてはLITTLE WEAVERの”ウォッシュマン・ブルース”でいきなり、ダイナミックなアンサンブルへ。深夜のピラミッドガーデンは小音量のライブしかやらないと勝手に思っていたところに、意外な盛り上がりが生まれていく。武田が「この後、続々、ゲストを迎えてやっていくんですが、最初はドラマーで、素晴らしいシンガーでもあるmabanua」と、紹介されて登場した彼とは、サポートする大橋トリオのレパートリー”サリー”をmabanuaの、丸みとスモーキーさが相まった声と選びぬかれたアンサンブルで披露。
続いてハナレグミもエレキギターを携え、ともにmabanuaの曲をプレイするというかなりレアな展開に。そして武田、ハナレグミが口をそろえて「そろそろあの御神木のような男を呼びましょうか」と、促されて出てきたTOSHI-LOWはさかんに場違いで恐縮ですという遠慮がちな態度が逆に場を温めていく。ハナレグミに「何、最近、メガネキャラなの?」と突っ込まれると、「いや、岸田とかゴッチとか、向井秀徳とかそっちに入れてもらえないかなと思って」と言えば、TOSHI-LOWもハナレグミのアフロに「”土偶〜”とかやってる人と同じになっちゃったじゃん」とやり返す。
すっかりいつものノリになったところで、ボ・ガンボスの”トンネル抜けて”や、ゆらゆら帝国のカバー”空洞です”をBRAHMANの曲にしか聴こえない歌唱で聴かせ、野太い男性の歓声が上がったりも。弾き語りで成立するように歌に向き合っている近年のTOSHI-LOWの本気を見た思いがした。
緩いようでいて、おのおの想像するものが多いステージを見せてくれたTICAとその仲間は、そのカバーを知る人も多い、ザ・クラッシュの”ロック・ザ・カスバ”をぐっと自らのセンスに引き寄せたスタイリッシュな演奏で届ける。深夜のこのエリアの意外性を体現する共演だった。