cero
ホワイトステージ伝説、更新!
最強のエクスペリメンタル・ミュージックのメッカというイメージがホワイトステージにはあるのだが、ここで幾多の名演が繰り広げられてきた、その歴史をたった今、ceroが更新したと感じた。大げさだと言う人がいるとしたら、炎天下ということで若干、酌量いただくとして、それでも、日本人が日本人のままで新たなグルーヴやリズムをオーディエンスとともに成し得た場所として、この1時間は記憶されると思う。
入念なサウンドチェックを終えて、ceroの3人——高城晶平(Vo/G/Fl)、荒内佑(Key/Cho)、橋本翼(Gt)と、サポートのMC.sirafu(Tp/スティールパン)、あだち麗三郎(Sax/Perc)、厚海義朗(Bs/Cho)、光永渉(Dr)が登場すると、詰めかけたオーディエンスから大きな歓声が上がる。マーチングドラムに6人の音が重なって、フジにハマりすぎなオープニングは”マウンテン・マウンテン”!今回のホワイトは、ブラックミュージック、それも最近のディアンジェロなどに通じる生々しさとアブストラクトな感覚が融合したグルーヴで、バンドの新たなレベルへの突入を痛感させた『Obscure Ride』のレパートリーだけで、もしや構成するのか?と思っていたが、むしろここまでの道のりを1時間のセットリストで体現する目論見か。そして早くも3曲目に、2015年きってのサマーアンセム”Summer Soul”のタイトルコールとともに、オーディエンスが揺れる。高城のボーカルはCDよりさらに出ている印象を受けた。ソウルやR&Bのボーカリストとは全然違う声質で、発明と言えそうな唱法で歌うのは半ば力技ではあるのだが、そこで歌われている東京に暮らす青年たちの日常を高城の歌唱で届けると、上手いだけのボーカリスト以上の破壊力が発揮される。何故なんだろう?その情熱に憧憬を感じるからだろうか。
ニューアルバムのモードは続く。アフリカンリズム的なビートが”Elephant Ghost”は歌詞のシュールさが灼熱とミックスされて、白日夢のような効果をもたらしてくる。グルーヴに身を任すというより、脳裏に映像が浮かぶのがceroの音楽のceroたる所以だと感じた曲だった。高城がMCらしいMCで、「フジロックのホワイトステージに立てるとは思いませんでした。長い(アルバム)ツアーの最後にフジロックが入って、みんな打ち上げのつもりでやってるんで、皆さんも酒のんでガンガンやってください!」と、涼しげな表情とは裏腹に高揚しまくった言葉を届けてくれた。
ちょっとカームダウンさせるように、サウダージ感あふれる”Orphans”を届け、人気曲”Contemorary Tokyo Cruise”で、ファンクとカチャーシーが合体したような踊りがそこらじゅうで発生。橋本がフィードバックをぶった切るようにギターカッティングし、荒内のピアノがそれを鎮めたところで大歓声が上がった。
「ありがとうございます!ラスト、”Yellow Magus!」と、タイトルコールした高城はハンドマイクで前方に出てきて、独特のフロウで歌い、ラップする。ライブでより大胆に自在に繰り出されるエフェクティヴなサウンドは、やはりホワイトステージならではの、バンド、スタッフ含めた「やったろう感」に満ちていて、すべての演奏が終わったとき、ceroのホワイト伝説が宣言されたのだ。