JOHNNY MARR
UKセレブレーションの始まり
今日のグリーンステージ後半は80年代後半以降のUKロック・セレブレーションの趣きだ。その口火を切るジョニー・マー。正直に言ってザ・スミスの伝説の名曲レベルに認知されているソロ曲はないのだが、今日は筋金入りのUK好きが集合してきた感じだ。なんたって、ジョニー・マー、RIDE、ノエルなのだから。
赤にドット柄のシャツでギターを肩から提げた状態でステージに現れたジョニー。シュアなテクニックを持つバンドはプロっぽく、逆に気ぜわしく動くジョニーは、どこか永遠のロック少年というか、不器用で神経質そうなマンチェスターの痩躯の青年がそのまま50代になった印象だ。グリーンステージという大きすぎる空間に似合うとはいえないけれど、彼の変わらなさに少し胸が熱くなる。
ソロ曲に続いて早くもザ・スミスの”Stop Me If You Think You’ve Heard This One Before”をやったのには驚いたが、再びソロの近作『Playland』から、四つ打ちビートにソリッドなリフが乗る”Easy Money”やファストなタイトルチューンをやったあと、再びザ・スミスの”Big Mouse Strikes Again”を歌った時のジョニーとモリッシーの声の相似に驚いた。さらに思春期的な現実逃避を美しすぎるメロディで歌う”There is a Light That Never Goes Out”の歌い出しである<テイク・ミー・アウト、トゥナイト>のフレーズを耳にした時の驚き。この特に内省的で、モリッシーならではの心情を歌ったと思っていた曲だが、常識に反抗して自分たちの思想でもって生きることを恐らくあの時代に最もセンセーショナルなロックバンドとして表現していたソングライターの一人なのだ、ジョニー・マーは。ああ、ザ・スミスというバンドの表現は二人のうちのどちらかのものじゃないんだなと、当たり前ながら感じ入った、ジョニーの歌声だった。
なんだかソロ曲よりセルフカバーの方がリアクションが大きいのが気の毒に思えていたけれど、誰にも真似できない美しい楽曲を残して、そして今も生き続けていることを目の当たりにすると、オリジナルメンバーでの演奏はもちろん聴きたいが、なんといってもあの澄み切ったアルペジオとともに、ザ・スミスのナンバーをメンバーが歌っている現実に感謝するしかない。そしてそのギター哲学は、ソロ楽曲の何曲かには確かに息づいていて、”25 Hours”などで蒼く揺らめくようなギターを聴くことができた。そして揺らぎと言えば、なんとラストに、トレモロの芸術と言えそうな”How Soon Is Now?”で、深い余韻を遺したジョニー。MCでは「また近いうちにな」みたいなことを言っていたが、それはものすごく近い将来のことなんだろうか?この後のUK組のステージも何がが起こるのか?