RIDE
失われなかったみずみずしさ。
なんて新鮮な音なんだろう。19年ぶりに本格的に活動を再開したとは思えないくらい現役感のある音が次々と放たれていく。待ちに待った再結成ライドの来日公演は、まずフジロックが選ばれた。グリーンステージで彼らを観た人たちはその意味を十分に理解したことだろう。
昼間の暑さも収まってきた夕暮れの苗場にライドが登場する。ステージの背後にはシンプルに「RIDE」という文字だけ。その文字をみるだけで気分は上がっていく。This Mortal Coilの「Fyt」が大音量で流れ、マーク・ガードナー(G,Vo)、アンディ・ベル(G,Vo)、ステファン・ケラルト(B)、ローレンス・コルバート(Dr.)が揃い、まず「Leave Them All Behind」からスタートする。このキラキラした感じ。もはやとっくに若者でなくなったメンバーたちなのに、こんな音がだせるのかという驚きがあった。2曲目の「Like a Daydream」のイントロが切れ込んでくる感じは、あのころと同じなんだと感じさせる。
選曲は1stアルバムと2ndアルバムからが中心で、要するにお客さんたちが求めているライドだったわけで、バンドは十分にそれに応えていた。マークは若々しい声を保っていて、アンディは、さすがにスタジアム・クラスのバンドで活動していただけあって現役感は一番あり、ローレンスのドラムは昔よりも今の方が迫力あるのではないかと思えるくらいのものだった。
彼らのギターノイズは、緑に囲まれた高原の心地よい空気と溶け合っていた。「Polar Bear」も「Seagull」も最高すぎて泣けてくる。初期の曲、「Chelsea Girl」の躍動感もうれしい。最後のアルバム『Trantula』から選曲されたは「Black Nite Crash」だけだった。
「OX4」のキラキラ感も素晴らしいのだけど、「フジロックに捧げる」とマークが語って演奏された「Dreams Burn Down」がすごかった。静と動のギターノイズが織りなすドラマティックな曲にステージ前のひとたちは両手を挙げて浴びるように音を感じていた。
「Taste」「Vapour Trail」と経て最後の曲は「Drive Blind」だった。この曲の間奏で繰り広げられたノイズ放出大会はすごかった。これマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン並みにそのまま20分やっていいよ。と思えるくらいだった。マークとアンディのギターが競い合うように出されたノイズは、夜空や木々と一体になって空間を作っていた。そして、マークが12月に会おうと言い間違えてすぐに11月と訂正したけど、ホントに11月のライヴは絶対に観た方がよいと思わせ、バンドはステージをあとにしたのだった。