LIVE REPORTGREEN STAGE7/29 SUN
VAMPIRE WEEKEND
© Photo by MASAHIRO SAITO© Text by 若林修平
Posted on 2018.7.30 02:15
さらなるネクストレヴェルへ
バンドのブレーンをエズラとツートップで担っていたロスタム・バトマングリ(Kb/Vo)が脱退し、3人体制となってから初めてのフジロック出演。「メンバー脱退」という言葉には、どうしてもマイナスイメージがつきまとってしまうもの。加えて、その対象がロスタムともなれば、マイナスの大きさは半端なく大きい。ゆえに、フジロックに出演が決まった今年2月時点では、正直期待感よりも不安感が優っていた。
しかしそんな不安感を一掃させたのが、仰天の新ライブバンド編成だった。活動再開の発表からフジロックまでの2ヶ月の間に行われたライブのバンドはなんと7人編成!内訳は、エズラ・クーニグ(Vo./G.)、クリス・バイオ(B.)、クリス・トムソン(Dr.)の正規メンバー3人に、ブライアン・ロバート・ジョーンズ(G.)、グレタ・モーガン(Key. / G. )、ギャレット・レイ(Dr. / Per.)、ウィル・キャンゾネリ(Key.)のサポートメンバー4人。「えっ!これ、どうなっちゃうの?!」というのが率直な感想だったが、手練れが揃うその新編成に大きな期待もあった。グリーン・ステージ前方は、ボブ・ディラン終わりで去って行く人と、続けて観て行く人と、だいたい半々ぐらい。しかし、そこに残っている人たちの口から聞こえてくるのは「ヴァンパイア超楽しみ!」とか「”A-Pank”と”Giving Up the Gun”は絶対に聴きたいよね!」など、熱量はすでに高く、改めて彼らの存在がヘッドライナークラスまで膨れ上がっていることを感じさせられた。
ライブに関して結論から先に言うと、とにかく「凄い」の一言。ライヴ・メンバー(楽器)が増えるということは、音数が増えるということ。それは彼らの魅力の一つである「スカスカさ」を損ねてしまう危険性も大いに孕んでいる。けれど、実際はその音数の多さを器用に活用し、彼らの楽曲の魅力を大いに際立たせていた。ギャレットのパーカッションは、これまた彼らの魅力の一つでもある「アフロ・ビート」を表現するためのとてつもなく大きな武器になっていたし、ブライアンのギターはロスタムとは異なる音圧を出していて曲の大きいアクセントになっていた。グレタのキーボードに関しても、目にわかるほどの大きな変化はないものの、微妙な音の変化を表現するのに大きく寄与していた。
セットリストに関しても、これまでのヴァンパイア・ウィークエンドにはなかった新しい試みが多く見られた。これまで殆どやってこなかった曲のカヴァー。エズラがゲスト・ヴォーカルとして参加したSBTRKTの”New Dorp. New York”に、アイルランド出身のロック・バンド、シン・リジィの”The Boys Are Back in Town”。”Cape Cod Kwassa Kwassa”では、ザ・ビートルズの”Here Comes the Sun”を人力でマッシュアップするなんてこともやっていた。さらに極め付けは、アメリカのインディー・ロック・バンド、ハイムのダニエル・ハイムのゲスト出演。
それら全ては、彼らの楽曲の良さを際立たせるための武器で、どの曲も結果的に過去最高レベルにかっこいい楽曲に変化を遂げていたと思う。シンプルなアレンジに厚みを持たせた”A-Punk”、祝祭感3倍増しの”Cousins”、アウトロにファンク/ゴスペルなアレンジを与えることでオーラスの大団円を作りあげた”Obvious Bicycle”───。もう断言していいんじゃないだろうか、彼らがさらなるネクストレヴェルに到達しようとしていると。
もうじき発表されるのではと噂のフォース・アルバム『ミツビシ・アート(仮)』。今日、新曲は一曲もやらなかったが、今日のライブを見てしまったら期待感は増すばかりだ。
<セットリスト(ライターメモ)>
Intro (BGM “Back In Black”)
Diane Young
Holiday
Cape Cod Kwassa Kwassa (mashup “Here Comes the Sun”)
Oxford Comma
White Sky
Horchata
New Dorp. New York (SBTRKT cover)
Step
Unbelievers
Cousins
A-Punk
Worship You
Ya Hey
Empty Line
The Boys Are Back in Town (Thin Lizzy cover) (with Danielle Haim)
Obvious Bicycle (with Danielle Haim)
Son of a Preacher (Dusty Springfield cover) (with Danielle Haim)
[写真:全9枚]