男も顔負けの骨太ロックンロール
今年のフジロックはポップ・ミュージックやロック・ミュージック、さらにはクラブ・ミュージックにいたるまで女性アーティストの活躍が本当に目立つ。おそらく、今年のフジロックのベストアクトに今日のハイムのライヴをあげる人も多いはずだ。それくらいに密度の濃い、骨太なロックンロールショーをみせてくれた。
ハイムのメンバーは正式にいうとダニエル・ハイム、アレナ・ハイム 、エステ・ハイムの3姉妹にドラムのダッシュ・ハットンが加わった4人なのだが、3姉妹バンドの体裁をとっている。UKの音楽業界人が選ぶ「BBC SOUND OF 2013」のブライテスト・ホープに選ばれており、本国アメリカを超えイギリスでもブレイクを果たし、満を持しての初来日、初フジロックである。
つい先日、アーティスト名を「JAY-Z」から「JAY Z」に改名したことでも話題になったJAY Zの“99 problems”をSEにして、メンバーが登場。ハイム3姉妹がフロントに一列で並ぶだけで絵になっている。YouTubeで映像を観るといつもサングラスをかけているのだが、室内ステージだからというわけか、今日は珍しくかけていない。そして、ライヴは“Better Off”から幕を開ける。演奏が始まった瞬間から突然、大粒の雨が降り出し、オアシスエリアからレッドマーキーに民族大移動が始まったので、ハイムのことを全くしらない人もたくさんいたと思うのだが、アカペラの合唱からドラム、ギターとつぎつぎと音に厚みが加えられていくこの曲ように、レッドマーキーも次第に熱を帯びてくる。
“Oh Well”(Fleetwood Macのカヴァー曲) や“Forever”なんて、エフェクターもなんもなしのアンプ直挿しのロックンロール。嗚呼、かっこいい。途中から雨脚がさらに強くなり、「私たちは室内でラッキーね!」なんて笑いながらはなしていたけれど、むしろ逆に、雨が降りしきるなかで、びちゃびちゃになりながら聴きたいと思った人もいたのでは?そっちのほうが初日のナイン・インチ・ネイルズのように、野外フェスティバルならではのロックな感じを引き出せたかもしれない。
「カワイイ」なんて言葉はハイムをみているとまったく思い浮かばないけれど、唯一、女の子らしさというか、おどけてみせたのが中盤のMC。「知っている日本語がひとつしかないの…」なんて言いながら、「ワカレーオシモー」って演歌?歌?(わかった方、是非教えてください)を歌って会場を爆笑させていたことくらいか。
「ここは私たちのホームのようね」と言っていたように、緊張することなく演奏をしており、彼女たちがもっている今の勢い、ロックンロールをやりたくてバンドをやってるんだという初期衝動がそのままサウンドにのっかって、突き抜けた音になっていた。ラストに3姉妹がドラムを乱れ打ちをする姿なんて、まさに男も顔負け。「バンドマン=男」の公式をぶっ壊すためにこのハイムは結成されたのだ、といわんばかりのライヴだった。
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