LIVE REPORTRED MARQUEE7/27 FRI
MAC DEMARCO
やりたい放題!マック印満載のステージ
とっぷりと日が暮れたフジロックの初日。レッドマーキーのトリを飾るのはカナダはモントリオール出身のシンガー・ソングライター、マック・デマルコだ。今年1月のツアー以来、約半年ぶりのステージとなる。
ステージが暗転して激しいベース音が打ち込まれた後、スター・ウォーズのテーマが壮大に鳴り響き、マックとバンド一同が登場した。マック含め、メンバーの全員がフジロックの会場を歩いていそうな気取らない出で立ちで好感が持てる。
マックは自己紹介をした後、メンバー全員を丁寧に一人一人紹介していく。ステージ脇で座って観ている女の子たちまで紹介する(マックの彼女や、女優の水原希子さんも座っている)。キーボードの気だるい音がゆったりと鳴り響く‟On the Level” からスタート。バックには、デフォルメ化されたマックが探検する感じの見ていて楽しいゲームライクな画像が流れている。ゲームにインスパイアされているマックならではの粋な演出だ。マックはマイクを何度も振り回して、いたずらっ子な笑顔で楽しそうに歌う。‟On the Level”を締めて、マックがギターを手にして‟Salad Days”のフレーズを歌い上げると大歓声が上がる。デーモン・アルバーンを感じさせる温かく深みのある声でオーディエンスを包み込むように歌っていた。
それにしても、特筆すべきはマックの歌声。音源でのゆるふわなソフトな歌声に反し、時にはデスボイスでがなりたてるわ、奇声を上げるわでとてもワイルドだ。軽快でポップな‟Cooking Up Something Good”なんてまったく異質な声色で魅せる。そして、マックはコミュニケーションの達人でもある。‟My Old Man”では美しいピアノのフレーズをバックに前方に出てきて、逆立ちしておどけてオーディエンスを笑わせたり、‟My Kind of Woman”の冒頭で煙草をくわえたものの手元にライターがないことに気づいて、「ライターを投げてくれよ」の仕草をしたりする。そして、投げ込まれたライターをしっかりキャッチし火をつけ演奏するのだ。「恥ずかしがらないで!ロックンロールしようぜ!」といったコール&レスポンスからの大合唱の流れもそう。マックとオーディエンスのやり取りがこんなに自然に感じられたのははじめての体験だ。自由奔放なようでいて、オーディエンスにしっかりと寄り添っているマックだからこそできる芸当と言えるだろう。
そして、マック印満載のやりたい放題っぷりも勿論健在だ。随所で缶ビールやジャミソンをがぶがぶと飲み、間奏部にステージ脇に行って女の子たちとダベっていたりする。出だしをミスったドラマーにコメントを無理強いしたり、メンバーとじゃれ合ったり、彼女さんを引っ張って来て、オーディエンスに挨拶をさせたりと。どれもこれもが微笑ましい一幕だ。
日本人エレクトーン奏者、関藤繁生の「ザ・ワード」というインストゥルメンタルを下敷きにしている‟Chamber of Reflection”で会場を感動で包んだ後、ラストの曲‟Still Together”へ。何とポスト・マローンがマラカスを手に楽しそうに登場し、フロアからワッと歓声が上がる。意外と巧みなマックの高速ラップも飛び出し、この曲一番の聴きどころであるファルセットがめちゃめちゃ心地よく会場に響き渡る。一旦、ステージを締めたと思いきや、メンバーとスタッフにマイクを任せて日本人にお馴染みのあの曲を演奏した。坂本九の‟上を向いて歩こう”だ。マックはギターでメロディパートをご機嫌に奏でていた。当然のごとくみんなで大合唱。やっぱり良い曲だ!誰もが笑顔で大声で歌う。何とも幸せな瞬間だ。マックは、細野晴臣をはじめ、多くの日本人ミュージシャンにインスパイアされていることを公言している。日本への愛、感謝を‟上を向いて歩こう”で示してくれたように感じた。そして、‟Still Together”に戻り、ヴァースを情感たっぷりに数回高らかに歌い上げ、手を上げバレリーナのごとくクルクルと回って、バンドが最大限の音を出力して壮大に締めくくった。漫画『北斗の拳』のケンシロウの名台詞「お前はもう死んでいる」の一言とともに。。。
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