FUJIROCK EXPRESS '25

LIVE REPORT - GREEN STAGE 7/25 FRI

Vaundy

  • Vaundy
PHOTO BYfujirockers.org
TEXT BY阿部仁知

Posted on 2025.7.25 22:27

広大なグリーン、雄大なVaundy

HYUKOH & SUNSET ROLLERCOASTER|AAAも大盛況の雰囲気のまま、いつ以来なのかというくらいの人数で埋め尽くされたグリーン・ステージ。凄まじい人気だ。次に登場する男を待つ期待感が渦巻いている。

実を言うと僕は彼のことをそれほどよく知らない。でもコロナ禍の「特別なフジロック」の深夜レッド(時間的には実質トリ)をほぼ満員にした21年の初出演、ホワイトのトリとして入場規制の熱狂となった23年の話を聞くだけでもフジロックの層にしっかり刺さっていることがわかるし、周りの人に聞いてもライブがめちゃくちゃいいぞという声多数。なによりフジロックにおいて同じようなプロセスで駆け上がってきた、ずっと真夜中でいいのに。をはじめて観た時にハマってしまったので、これは観てみようじゃないか。ついにグリーントリ前の大舞台にVaundyの登場だ。

定刻から少し遅れて登場したVaundyは、もうそれだけで大歓声。そして最初のイントロからさらに大きな歓声を巻き起こした“不可幸力”からライブはスタート。広いステージ上を右に左に歩き回りながら、“裸の勇者”、“風神”とどんどん突き進んでいく。国内屈指の精鋭揃いというバンドのアグレッシブなサウンドにも興奮するが、ロングトーンをグリーン後方の森までバッチリ届けるVaundyの歌声がど真ん中で輝いている。こういうところは大所帯の中でACAねの存在感にやられてしまうずとまよにも似ているのかもしれない。

“踊り子”では、彼が「踊れるかい?」と呟くと、イントロが聞こえた瞬間近くにいた女の子が「踊りたい!踊りたい!」とはしゃいでいたのも印象的。軽快な歌にどんどん暮れていくグリーン・ステージにライティングがよく映える。ここで「やっほー。すっごい人がいっぱいいるね今日は」とVaundy、「はじめてVaundyのライブを観る人は?」と聞かれて僕も全力で手を挙げるわけだが、そこそこ多かったのか「さあ、アウェイということで。あっという間に終わっちゃうと思うんで、みんなね、楽しむ準備はいいですか?」とグリーンを煽る。いや、全然アウェイな感じはしない盛り上がり方だが、僕のようなまだ掴みかねている層にも突き刺してやろうという気概を感じる。

“タイムパラドックス”でグリーンにこだまする手拍子。気持ちのいいリズムピアノに乗せて、バンドと向き合いながら泣きのメロディを歌うVaundy。ダンスビートとシンフォニックなサウンドが絡み合う“僕にはどうしてわかるだろう”では、ライティングもあいまって、サビで一気にブライトに晴れるステージがとても美しかった。“しわあわせ”でもかすれた声の哀愁の表現が際立っていて、シンプルにいいメロディと歌声の表現力でグリーンを捉えてるんだから、すごいものだ。

「ありがとう。あれ?疲れてる?もしかしてみんな、午前中午後で疲れちゃった?おいおい本番はこっからだぜ。しゃー、フジロック!ほんとにお前ら踊れんの?気取ってるだけじゃねえの?」

めちゃくちゃ煽るじゃんかVaundy。でもそれが不思議と嫌な感じじゃなくて、不敵な姿が精悍に見えて気分も上がってくる。“常熱”や“花占い”、“Tokimeki”でも、グリーンのPA前エリア全員かってくらいみんなが手を挙げて、Vaundyに応える、ヘッドライナーでもなかなか見ないものすごい光景が広がっている。

「やっぱちょっと疲れてんな君たち?トリに残してんじゃない?許さないよ僕は。多分Vaundyのことを品定めしに来てる人がたくさんいる、あの辺とか。俺のこと観たら誰も観れねえぜ。再会しよう」と“再会”をドロップ。この後のアクトが一番楽しみな僕としてはちょっとギクリとしたが、「生意気な!」とか思ったら思う壺なんだろうな、ニクいやつだぜVaundy。これまでにもちらほら見えていた夜のグリーン名物・後ろの森に投影するレーザーもいよいよ本気を出して、“ホムンクルス”、“CHAINSAW BLOOD”で、広大なグリーンが彼の熱量一つで揺り動かされている光景は本当に壮観だった。

大きな熱狂がたどり着いたのは、さすがに僕でも知っている“怪獣の花唄”。ゆったり観てた人もちらほら立ち上がって、みんなで歌った「もっと」から描き出された光景は、例えばコールドプレイの“Viva la Vida”やThe 1975の“The Sound”にも勝るとも劣らないような強烈なクライマックス感を漂わせて、「まだ初日だよ!?」なんて思うほどだった。

いやーすごい。レーザー演出はあったもののグリーン夜としては控えめな演出で、サイドモニターもまったく使わず黒字に白の「Vaundy」ロゴがずっと大映し。それでもなお釘付けにして離さない彼の一本気な姿勢にやられた。やたら煽るのもライブに対する誠実な姿勢のあらわれなんだろう。ここに居合わせられて本当によかったよ。最後に君の言葉を借りてこう言わせてください。また会おうぜ。

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7/25 FRIGREEN STAGE