「懐かしいなあ」
いろいろな思い出がよみがえるCサイトに行ってみた。

去年、はじめてのフジロックに参加した僕は意気揚々とCサイトの中でも高台の場所にテントを立てた。理由は、景色が良さそうだったから。

テント設営時は、「フジロックを一望できる自分だけの城を手に入れたぞ」と鼻息を荒くしていたが、すぐに後悔した。上り下りが大変なのだ。
歯磨きをするにしても、シャワーを浴びるにしても、帰るころには汗がびっしょり。テント内に忘れ物をした日には、過去の自分を呪いたくなった。

そんな苦い経験から1年後、再びあの場所に戻ってみると、テントの数は増えている気がするし、僕の城跡には既に新しい城が建っていた。

「おいおい、後悔するなよ」とフジロック2年目の男が高みの見物だ。1年前の記憶がどんどんフラッシュバックする。

「ここのエリアは大変なのだ。キャンプサイトを変えなさい」

心の中でつぶやいた。でも、どこかでは羨ましさもあった。

なんだか自分だけが知っているお気に入りのスポットを、誰かに取られた気分。いつも昼飯を食べていた学校の屋上に先客がいた気分。マニアックなアーティストを友人に知られた気分。そんな感じ。

なんだかんだ、この場所が気に入っていたんだなと再確認した。

もうここにはテントを立てないと思っていたけれど、結局またここで設営を始めてしまう気がしている。