Sugar Plum Ferry

Gypsy Avalon | 2011/07/30 19:23 UP
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台湾のインスト・ロックの重鎮が放つ轟音

 アヴァロンに降り注ぐ小雨をも凌ぐ轟音であった。

 今年は3組も送り込まれた台湾勢(同じ年のフジロックに3組が招かれるのはこれが初めて)の中でも1998年から活動を続けているという4人組のSugar Plum Ferryは、ポストロックを聴く人の中では少なからず耳にしておいた方がいい名前だろう。彼等は、台湾のポストロックを代表する存在として名を馳せている。台湾ではいち早くこのジャンルの可能性に切り込みを入れたといっても過言ではなく、真摯に胸を打つインストゥルメンタル・ロックを奏でて、人々を魅了している。近年では世界的にも評価がじわじわと上昇していて、今年にはSXSWにも出演を果たした。日本のインスト・ロックの雄であるMONOとも共演をしているそうで、海外アーティストが台湾でライヴするときには指名される事も多いという。

 そういった情報を目にして彼等を体感する事をとても楽しみにしていたのだが、予想以上の凄まじい轟音と美しい旋律が交錯するライヴに随分と驚かされた。静から動へと徐々に遷移していくインスト・ロックが彼等の持ち味。それこそ初期の頃のMOGWAIやExplosions In The Skyといったバンドを思わせるもので、美しい物語を造形している。麗しきアルペジオ、切ないトレモロなどを丹念に重ねながら音圧を増していき、轟音へと発展。それがエモーショナルな熱い演奏と共に一気に会場へと叩きつけられる。その静と動の見事なコントラストを軸にして、人々の心に強烈なものを残していく。

 なぜか、客席にお尻を向けて演奏しているベーシストが気にはなったが(te’の元ベーシストみたい)、そのパフォーマンスは10年以上に渡って磨き上げてきただけあって、流石の一言。淡々と演奏している時の方が多いが、一度スイッチが入ると、驚くほどに激しく感情的に演奏するのがまた印象に残る。特に下手に陣取っていたギタリストとドラマーの鬼気迫る表情と動きからは、音にもとてつもない感情が宿っていたことを感じさせた。会場に集まった人々もまた思い思いに、そのインスト・サウンドから想起する物語をイメージしていたことだろう。

 特に印象に残っているのは中盤ぐらいで披露された「The Tolling Bell」。澄んだ音色と力強いリズムに牽引されながら、徐々に膨れ上がり、やがてはうねりをあげる轟音が会場に響く。それはまるで大河のような迫力があって、圧巻だった。ラストの曲でもまた一段と大きな音がアヴァロンを脅かして、彼等のライヴは終演を迎えた。その際にメンバーが少しシャイに挨拶して去っていったのもなんだか微笑ましい。

 とはいえ、台湾のポストロックの実力をまざまざと見せつけられたのは事実だろう。また、彼等が祖国で切り拓いてきた道の険しさ、そして自分達の音楽に対する矜持もまた感じさせるライヴであった。終演後には、隣の物販コーナーでCDを僕は迷わずお買い上げ。今回のフジロックで見たバンドの中でかなり気にいったバンドのひとつだ。


写真:輪千希美
文:伊藤卓也
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