加藤登紀子

Orange Court | 2011/07/31 22:51 UP
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7月31日、加藤登紀子とわたし

太陽が出たり隠れたり、出ていても雨が降ったりすぐ止んでみたり…3日目の昼下がり、はっきりしない空模様。そんな中、真っ赤な衣装で加藤登紀子がいた。歴代のフジロックの中でも名演のひとつに数えられる彼女のライブが再びオレンジコートで行われる。ぬかるみのオレンジコートに暖かな声援が響き、マイクから彼女の声が流れれば、さっそく凛とした空気でもって彼女がその場をコンサート会場に変えた。

一見さん的な見方をすると、彼女に対するイメージはポリティックな側面と、あとは『紅の豚』といったところか。たしかに2曲目から”Power To The People””Imagine”というジョンレノンのカバーを披露し、その次は”さくらんぼの実る頃”と続いて、ある意味でこの展開に多くの人がうなずき満足を得ていったに違いない。公演前のアトミック・カフェでも「若い人たちのこのエネルギーで国を変えよう」と言っていたというし、これぞ加藤登紀子!といったところである…と、そんなものであれば、イデオロギッシュなものが苦手な私としてはあたりさわりのない言葉でライブレポートを締めるみたいな形で終えているだろうが、実際はそれだけではなかった。たとえば前述のジョンレノンの2曲において”Power~”は日本語訳の歌詞で歌ったし、”Imagine”は原詞だが、曲の合間に対訳を聞かせてくれて、終わったあとにこんなことを言うのだ。「いろいろな時代に、その時々の出来事を当てはめて皆この歌を歌ったんです」と。

これから歌う曲に対してその歌の背景、そこに込めた願いを話す加藤登紀子。歌うこととともに彼女が志したのは「コミュニケーション」なのかもしれない。曲がきちんと伝わるよう、彼女は楽曲ひとつひとつに対しひたむきにオーディエンスへメッセージを伝え、そして改めて歌を伝えにくる。それは言わずもがな、聴衆に対して染みこむように届く。

3月11日を経て、あたふたしていた加藤が我が子から「自分のやるべきことを」とハッパをかけられ、そして作ったという新曲”今どこにいますか”が歌われた。どこにいますか、眠っていますか、抱きしめていますか、今日も力強く生きましたねーー彼女の言葉は、胸に染みた。そして「前に出た時、『これからの未来は暗い』なんて言ったけど」と日本の現状を嘆き、自分よりも若い世代の未来を祈る彼女が、そこにいた。こんな歌の届け方が、あるんだな。おのずと両手が歓喜と感謝の気持ちに溢れ、拍手を送っていた。


写真:岡村直昭
文:RJ
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