これまで幾度となく繰り返されてきた苗場のボードウォーク・セッションをご存じだろうか。それを知らない人にとってみれば、ピラミッド・ガーデンの象徴を包むように打ち付けられている木片になんの意味もないだろう。が、小さな子供を抱えた親や車いすの人たちでも苗場の自然を満喫してほしいと、地元の人たちを中心に日本中からボランティアが集まって少しずつ大きくしていったボードウォーク作りに少しでも関わったことがある人間にとって、これはただの外壁ではないのだ。
毎年、雪によって大きなダメージが与えられるのがボードウォーク。昨年暮れから今年と苗場を覆った雪は僕らの想像を遙かに超える重さでここにのしかかっていたようだ。
今年はフジロック開催を前に3回のボードウォーク・セッションが開催されているのだが、誰もが雪の重みで押しつぶされたり、朽ち果てた場所の多さに呆然としたという。修復しなければいけない場所は無数で、土台の部分までも作り直さなければいけないところも多々あった。
傷んだ箇所の板をはがし、釘を抜き、同時に修復を繰り返す。新しい土台作りから新品の板の釘打ち作業が続くと同時に、当然ながら、まるで無数と思えるほどの廃材を木々の生い茂る中から運び出さなければいけない。水分が染みこみ朽ち果てそうになっている板、丸太、木片のほとんどを手作業で森の外に移動させるのだ。
ピラミッドの外壁で使われたのはこのときに運び出された廃材だ。何度も森の中と外を往復して、水分の染みこんだ板の重さを肩に感じる。振り返れば、それほどの作業ではなかったかもしれないが、ここには参加した人たちの汗も染みこんでいるように思えるのだ。
文・写真:花房 浩一