気仙沼の若者がたどりついたダークツーリズム
大陽光発電や天ぷら油の廃油由来のバイオディーゼルで電力をまかなっているジプシーアバロンは、311以前から電力だけではなく環境問題全般や、市民活動に積極的にコミットして来た歴史がある。ジプシーアバロンと密な関係にあるアバロンフィールドにあるNGOヴィレッジの出店者によるトークセッションで、例年通りの幕開けとなった。
初日のテーマは「つながりがつくる未来~東北復興の現場から~」。 「すべての生命が安心して生活できる社会(世界平和)の実現」を目的としたNPO法人テラ・ルネッサンスによる大槌復興刺し子プロジェクト、陸前高田市の津波到達点上に桜を植樹し、震災を後世に伝える桜ライン311、気仙沼を中心に子どもたちの自主学習支援等をおこなっているNPO法人底上げ、同じく底上げで似顔絵を描いているりんごちゃん、福島県奥会津地方にある昭和村で都市農村交流を基盤とした交流をおこなっているNPO法人苧麻倶楽部、の代表者がそれぞれの活動について紹介をおこなった。
すでに震災から3年が経過している。それぞれのNPO法人は継続的な活動を通じて視野が広がり、「日本のこれから」についても考えることになったようだ。依然として復興の目処すらたたない地域の現状を知り尽くしている登壇者から「被災地が現在直面している課題は高齢化や人口流出等日本が抱える課題と直結している。これら課題へのチャレンジは日本全体の課題解決につながる」という論点が出されたことを、私たちは重く受け止めるべきであろう。
また、NPO法人底上げからは、被災時に高校生だった若者が大学に進学し、地元を離れながらもできることはないかと考えた結果、被災地ツアーを企画・実施しているという活動が紹介された。地元に残っている中学生らもツアーの企画に参加しているという。 この活動は観客を勇気づけたらしく、静岡県富士宮市で毎年おこなわれている野外フェス朝霧JAMの実行委員長秋鹿氏(朝霧ジャム経験者には「ラジオ体操のおじさん」と言った方が分かりやすいか)が飛び入りでマイクを持ちコメントする程の反響をみせていた。
人類の死や悲しみを対象にした、具体的には災害被災跡地や戦争跡地などをめぐる観光はダークツーリズムと呼ばれている。同じくジプシーアバロンでおこなわれるアトミックカフェで司会を務める津田大介氏や最終日にゲスト出演する東浩紀氏らはつい先日「チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド」という本を出版し、全世界的に大きな衝撃を与えたチェルノブイリ原子力発電所の観光地としての側面を紹介している。
観光というと浮ついて聞こえるかもしれない。しかし、若い当事者が自分の力でできることをと考え抜いた結果と知の最先端ともいえる思想家やジャーナリストがたどりついた結論が一致している事実は無視できないだろう。復興に対する真摯な実践と思考が、奇しくもジプシーアバロンで交錯したのである。
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