前半:ネパール版ジャムバンド/後半:まったりとした世界
フジロックが始まり、たくさんの人が続々と集まってきているけど、ここジプシー・アヴァロンはマッタリした空気が流れていて、他とは違う世界を作っている。ステージを見下ろす草っ原に座っていると、バッタやトンボやその他いろんな昆虫がやってくる。アトミック・カフェのトークイベントが終わるころからメンバーたちがステージに現れセッティングを始める。ステージ下手からキーボード、パーカッション、タブラ、バンスリ(フルートみたいな横笛)とエレクトリックベースが並ぶ。
開演予定時刻を10分切るくらいから徐々にお客さんが増えていく。多くの人が、キャンプ用の椅子や敷物を用意していて座っている。ステージ脇の通路は大勢の人たちがさらに奥地を目指して歩いている。その喧騒とゆったりとした時間が流れる場所の対比が面白い。中にはその空気に引っ張られて草っ原に腰を下ろす人もいる。そしてそれなりに人が集まったところで、MCの2人が登場してバンドを紹介する。
そして彼らから出てくる音は、ネパール出身であるウペンドラ・ラル・シンのキーボードを中心に、この場の空気を裏切らない。柔らかくて、明るくて、リズミカルなもの。ネパールの民俗的な楽器を使ったジャムバンドなのだ。非常に気持ちいい。それぞれの楽器の響きから「ワールドミュージックだなぁ」という方面でも聴けるし、その気になれば踊ることも可能だろう。もし、アヴァロンでなく、フィールドオブヘブンだったら踊りながら聴く人もいるだろう。
ここ数年わりとフジロックに出ているメンバーがいるので、彼らが「慣れている空気」を出していて、お客さんが喜ぶツボを知っているかのようだ。キーボードやベースのソロパートなんかは、民俗音楽的なマナーから脱して、エレクトロなジャズやファンクを取り入れたものだった。
30分強の演奏が終わったところで、ステージ上はサニルとバブの2人になり、一転してバンスリとタブラによるアンビエントな世界に。今度は正真正銘のマッタリとした空気を作り、瞑想している白人カップルがいたりして、やっぱりアヴァロンはそういう場所なんだなということを再認識させてくれた。
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