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Posted on 2013/07/26 14:00
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怒髪天

ハードコアおっさん・不法でない集会

「ウィーアー、ジャパニーズ・モースト・フェイマス・オッサン・バーンド!」

失礼をかえりみず連呼させて頂きたいのだが、怒髪天は今年、結成29年目を迎える。おっさんである。おっさんの、おっさんによる、おっさん好きのためのハードコアなステージ。フジロック初日、白昼のホワイト・ステージは、まさにおっさん地獄のるつぼと化した(良い意味です)。

男、男とこれでもかと繰り返されるオープニングSE、”男祭”が荘厳に鳴り、観客の三三七拍子に迎えられて、メンバーが登場する。最後に登場したボーカルの増子(兄ィ)がポケットよりコームを取り出し、ぴっちりと分けられた七三分けのヘアを整え(本人の自腹調達&名前入りらしい)、そしてそれを客席に投げ入れると、”独立!俺キングダム”でライヴはスタートした。

そのまま”濁声交響曲”、”GREAT NUMBER”へとなだれこむ。男も女も、とかく世知辛い昨今。怒髪天の歌はまるで、自分の生活が見られているんじゃないだろうかと思えるほどリアルだ。応援歌、人生讃歌なメッセージも、地に足が付いているゆえ、強力な説得力がある。

「外国の人いっぱいいるから、ちゃんと英語で、MC考えてきた!グッドアフタヌーン、ジャパン!アーユーペリー?今日はね、このあと、イエロー・カードってバンドが出るそうなんでね、先にレッドカード出しちゃったみたいなね。」こう語ってホワイト・ステージ周辺をいっきに黒船来航時代に引きずり落とすかと思えば、ステージ脇を通り過ぎるフジロッカーにも「ご通行中の皆さま、キタナい声で失礼します~」と選挙ばりに声かけを励行。パンクスでありエンターテイナーでもあるボーカルの増子兄ィが自在にライヴを進行させ、みるみるうちにお客さんを吸い寄せてしまう。

鉄火場感満載、ドスの効き過ぎるアイドルソング、”夏のお嬢さん”も演奏され、おっさんの本懐炸裂の”押忍讃歌”、”オトナのススメ”と続くと、スカなリズムで踊り出すお客さんも続出。往年の名曲”流れる雲のように”では伝家の宝刀「R&E(リズム&演歌)」全開で、”酒燃料爆進曲”では会場中で一斉に「エア呑み」が起こり「エア千鳥足」が多発。最後にはメンバー全員ハッピを羽織り、もはや楽器も放棄状態の”ニッポン・ワッショイ”の音頭で、「元祖ジャパニーズ・サークル・モッシュ」が会場に出現したのだった。

そんな笑顔の集まる彼らのステージを見ながら、ふと2010年のフジロックでも怒髪天がホワイト・ステージに立っていたことを思い出していた。そして、そのあとに続いて登場したのが、まるで兄弟のような盟友・ブラッド・サースティ・ブッチャーズであったことも。

「音楽で哀しい思い出を消すことはできないけど、楽しい思い出を一個、増やすことはできる。」

2011年夏。春開催だった荒吐ロック・フェスティバルはその年、東日本大震災を経験し、8月に延期して開催されることとなった。間違っても「大丈夫だよ」なんて軽々しく言うことのできない荒々しい傷跡が、東北の土地に、そして人々の心に残っていたさなか、怒髪天のライヴで増子兄ィはこう語っていた。今年春、ギター&ボーカルの吉村秀樹をあまりにも早く失ってしまった喪失感はきっと、これからも埋まることはないだろう。でも。楽しい思い出なら、これからもずっとずっと重ねて行けると思える。そして怒髪天は今日も歩みを止めることはない。まだまだ行ける。「マダマダ行クヨ、ハードコア!」そう思えたステージだったのだ。

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