木立の中を抜けていく歌声
木道亭のステージとボードウォークの合間、木々がそびえ立つ空間には、主役の登場を今か今かと待ちわびる200〜300に及ぶオーディエンスの姿があった。彼らが待ち続けているのは畠山美由紀。ステージ越しに見える楽屋テント内に、その姿が確認できた。
予定時刻の14時50分を少し過ぎてステージに上がった畠山は、シンプルな白いTシャツにジーンズというカジュアルな出で立ち。服装と同様に、彼女自身にも緊張した面持ちは見られなかった。サポートギタリストとして共に壇上に上がったのは、3日目のアバロンに出演が決まっている小池龍平。畠山の活動ベースとなる東京のみならず、地方ツアーにも同行しているパートナーだ。
2人の演奏中は天気も良く、控えめに差し込んでくる木漏れ日が心地よさを与えてくれる。恵まれた環境下での畠山の歌声と小池のギタ—は、2人の間で言葉を要さない会話が行われているように感じさせられた。豊かな緑に囲まれたカフェにいるような気分になる。それは「もう一杯コーヒーを飲もうよ」といった英語詞の影響もあったのかもしれない。
素晴らしかった演奏は、今年のフジロックに出演するアーティストのカバーとして紹介された、スザンヌ・ヴェガの”Gypsy”。あまりに心地が良く、歌と演奏に身も心も委ねっぱなしの数分間を過ごした。ゆったりとしたアレンジに仕上げたCCRの”雨を見たかい”も同様だ。最後は手拍子をとオーディエンスに呼びかけ、和やかな空気に包まれて演奏を終える。途中、「年を重ねると野外での演奏が大変…」などと冗談を言っていた畠山だったが、野外のシチュエーションを十分に活かした歌を聴かせてくれるのは彼女の魅力のひとつだろう。次はどのステージに出演するのか。終演後には、そんな少し先の未来に想いを馳せていた。
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