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Posted on 2013/07/26 21:30
  • ライブレポート
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TAME IMPALA

影絵が巨大な獣に化した

ほぼ逆光か、真上、正面からの照明ゼロ、R.G.Bというかサーモグラフィでみるような配色で構成されたバックの映像だけで、遠くでみれば、ほぼ影絵。表情なんてうかがい知る由もない。でも、ライヴにおいてはそんなことはどうでもよく、曲へとすべての集中力を一ステージ上へ見事に奪った。すべてにおいて申し分のライヴをやり逃げしていった。波ひとつ立たない水にざっぶーーんと飛び込み、浮力により身体が地上にあがってくるまでの無という快感を1時間浴びせられ続けた。

NMEが選ぶ、2013年のバンドはFoxygen、それに必ずといっていいほど並んで出てくる名前が、Unknown Mortal Orchestraと、初日のレッド・マーキーのトリとして初来日、初フジの初ステージに登場したTame Impalaなのだ。ひどくなる一方の雨をしのぐためということを差し引いても、これだけ満杯になるという光景はステージ上のメンバーにとっても、こちらで共有しているオーディエンスにとっても初日の締めにはこれ以上ない至福の時間となった。

「初めてのフジロック、とってもキレイで、とりあえず素晴らしい」ボーカルのケヴィンは満杯になったレッド・マーキーのオーディエンスに向けて言った。その声は、彼から発せられる曲のハイトーンボイスとは一転、落ち着いた低めの声なのだ。

新旧織り交ぜたセットリストでも異彩を放ち、今日のライブを決定的なものにしたのが、アルバム『Lonerism』の”Elephant”だった。ステージは真っ赤なライトに染まり、まさに像が全体重で前へと歩かのような重さと鈍さが交錯していく。高々とギターを掲げると、遠くから見れば、影絵どころか、マッチ棒にすら見えてしまうケヴィンが巨大で凶暴な獣と化した。ステージがオーディエンスを飲み込んだ瞬間を目の当たりにした。こんなに気持ちいい瞬間があるだろうか。”Be Above it”、”Endor Toi”、”Mind Mischief”なんかの曲が立て続けに演奏され、それぞれ個人ひとりの賞賛が、どんどんと結合していき、地から響くような大歓声がレッド・マーキーを包んだ。レッド・マーキーの外は今日一番の大雨に見舞われていたようだったけれど、自分の目の前に広がるマジック以外に視野に入ってくるものなんてなかった。

どろどろとうごめく音の押収と、赤、青、緑の不規則に描かれ、こちらへ向かってくる不規則なラインが、まさにTame Imparaそのものなのだ。今現時点でのこのバンドの完成度の高さ…今後どんな化け方をするのか、末恐ろしい。

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