沖縄の「今」を歌い続ける唄者
上間綾乃さんの名前は、音楽の仕事に携わる友人からも、度々話に聞く機会があった。「歌姫」という言葉が使い古されてしまっている昨今ではあるが、唄の力を強く感じられるような希少な歌声を聞かせてくれるというのだ。彼女は昨年、「唄者」というアルバムでメジャーデビューをしている。「唄者」とは沖縄民謡の歌い手のことだが、その名の通り、沖縄の民謡を7歳の頃から歌い続けているという。
ステージに登場したのは、華奢で瞳が大きな女性だった。その華奢な身体から放たれる歌声は、非常にのびやかで、かつ若さや初々しさといったものを含んだ清涼感があった。また笑顔が素敵で、途中で降った大雨にも「私は晴れ女だから」と笑ってみせる。そんな彼女の歌声と立ち振舞に、アヴァロンを抜けてホワイトステージへ向かおうとしていたお客さんも、思わず足を止めていた。
伝統民謡だけでなく、オリジナル曲も数曲歌ったのだが、どの曲にも共通していたのは、言葉をひとつひとつ丁寧に歌っていたということ。もちろん私はウチナーグチ(沖縄言葉)の意味はわからないのだけど、その言葉に込められた想いや感情が手に取るように伝わってくるのだ。
「民謡は古い音楽と思ってるかもしれないけれど、毎日、毎日、産まれていくのよ」
そう彼女自身がMCで述べていた通り、今後も彼女は沖縄の「今」を歌い続けていくだろう。それを思ったとき、どうか彼女が明るい歌を歌える世界であってほしいと、そう思ったのだ。
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