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Posted on 2013/07/26 18:30
  • ライブレポート
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MY BLOODY VALENTINE

4分間のノイズ

青天の霹靂というか、棚からぼた餅というか、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインがフジロックに出演することが発表されてから、はや3ヶ月。マイブラの出演が発表されたときにはすでに、ヘッドライナーは出揃っていたし、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインというバンド名のフォントが小さかったことからも、マイブラがどこのステージに出るのか?ということはフジロッカーにとって大きな関心となっていたはずだ。結局、グリーンステージのヘッドライナーから3番目という場所で演奏することになったわけだけど、ケヴィン・シールズの性格を考えたら、どこで演奏するなんてことは気にしなさそうな感じがする。

「ケヴィン・シールズの言うことはアテにならない」、「(アルバムを)出す出す詐欺」、「完璧主義者の偏執狂」なんてよく言われてるけど、ケヴィン・シールズは生粋のアーティストなんだと思う。現代アーティストの会田誠さんが「芸術家にスケジュールや納期なんて概念はない」って言っているように、常人の考え方でアーティストの生態を理解しようとしてはいけない。僕たちが“You Made Me Realise” で浴びた4分間のノイズ(正直いって物足りなかった)は、ケヴィン・シールズにとってはたったの数秒なのかもしれないし、もしかしたら、何千光年にもわたる時間なのかもしれない。

2008年のフジロックではヘッドライナーとして、グリーンステージに立ったマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン。今回出演するのは夕方の時間帯であり、ホワイトノイズとも称される轟音が、まだ太陽の日が残る苗場でどのような景色を描きだすのかに注目が集まった。定刻通り、ステージ上に姿をみせたマイブラのメンバーたち。1曲目は“I Only Said”。PA前で観たのだが、ヴォーカルの声が埋もれてまったく聴きとれない(聴きとれないのがむしろ正解なのかもしれない)。3曲目は最新作『mbv』から“New You”。この“New You”の演奏がとても酷く、マイブラのメンバーたちも自分たちが何を演奏しているのかわからないようなグダグダっぷり(はにかんだ表情をみせたビリンダはとても可愛かった)。ケヴィンはステージ袖のスタッフに文句をつけており、明らかに本調子とはほど遠い。

しかし、今回のライヴはケヴィン・シールズの新たな試みも発見できた。まず、女性のマルチプレイヤーをサポートのメンバーとして入れていたこと。“New You”から幾度にもわたって登場し、キーボードやギターを演奏してバンドのサウンドに厚みを加えていた。もうひとつが『mbv』から新たな楽曲を演奏したということ。なかでも、“Wonder 2”はベースのデビーとドラムのコルムまでもギターを抱えて、マイブラのメンバー全員がギターをかき鳴らし、グリーンステージのオーディエンスに音の洪水を浴びせた。

2008年の伝説とも言われるライヴを観られなかった身としては、マイブラを苗場の地で観られることだけで幸せだったので、声が聞こえないとか、音が小さいとかはっきり言ってどうでもいい。今年のフジロックにマイブラが出演することじたい、当初は想像もつかなかったんだから。なので、“To Here Knows When”の音が粒子となって身体にとけ込んでいく、音と自分が渾然一体となるような感覚、“Soon”のドラムビートが聴こえた瞬間のゾクゾクする感じを苗場で体験できただけで十分だ。

マイブラを観たことがある人もない人も、ラストの“You Made Me Realise”のノイズ・パートの長さに関してはがっかりしたと思うが(持ち時間の都合上からか)、ライヴが終わるにつれて強まる雨の中、雨も浴びるし、音のシャワーも浴びるという不思議な体験は今回のライヴを観なければ経験できなかったはずだ。

セットリスト
1 I Only Said
2 When You Sleep
3 New You
4 You Never Should
5 Only Tomorrow
6 Come in Alone
7 Only Shallow
8 To Here Knows When
9 Wonder 2
10 Soon
11 Feed Me With Your Kiss
12 You Made Me Realise

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