キャリア45年の迫力を味わえ
オレンジコート、ひとつ前のスパークスが終わったころから雨が激しく降り始めた。その雨は、タワー・オブ・パワーが始まるころには一旦止むけれども、地面は田んぼみたいにぬかるんでいた。オレンジコートに自分が着いたときにはすでに1曲めが始まっていた。お客さんはスパークスよりも集まっていて、いきなり盛り上がっている。その光景をオレンジコート入口から見たときに、もうちょっと早く作業場を出られなかったのか後悔するくらいだった。
タワー・オブ・パワーはリーダーであり、サックス、ヴォーカルも担当するエミリオ・カスティーヨがMCで何度かいってたように45年のキャリアを誇るファンクバンドである。ステージ下手からトランペットが2人、バリトン・サックス、サックス2人、ヴォーカルが前列に並び、ドラムス、ベース、ギター、キーボードが後列に並ぶという配置。重厚でキレのあるホーン・セクション、ドラマーのデイヴ・ガリバルディとベースのロッコ・プレスティアの代役を務めるレイモンド・マッキンレーがすさまじいグルーヴを作り出し、ギターのジェリー・コルテスも見せ場があるというようにメンバー全員が熟練した職人であり、演奏の安定感が半端ない。ヴォーカルのラリー・ブラッグスが司会のような役割も果たす。
フジロックのお客さんたちもこうしたベテランのファンクバンドにハズレがないことを知っているのか、お客さんも多くコール&レスポンスもよく盛り上がっている。歌詞もサウンドもジャミロクワイの20年くらい先をいっていた「オンリー・ソー・マッチ・オイル・イン・ザ・グラウンド」のスピード感もすごいし、「ディギン・オン・ジェームス・ブラウン」のコール&レスポンスも楽しかった。しかし、やっぱり「ソー・ヴェリー・ハード・トゥ・ゴー」のスウィートなバラードを聴かせる上に、ホーン隊の揃った振り付けも楽しいところをみせてから一転、ゴリゴリのファンク「ホワット・イズ・ヒップ?」でハードに躍らせる本編ラスト2曲が最高だった。
当然のようにアンコールの声が上がり、まずは「ユア・スティル・ヤング・マン」。これもスウィートなバラードでとろけさせ、最後は再びファンキーな曲で締めるという構成で締めくくったのだった。遠くでは稲光が山の端をくっきり浮き上がらせ、豪雨が近づいているのを感じさせる、そんな不穏な空気と裏腹にオレンジコートは楽しく幸せが満ち溢れていた。
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