現実にはありえない場所へのトリップ
作品での表現とライブのテンションがここまで違うアーティストも珍しいが、だからこそフライローの予定不調和なライブは愛される。だが、作品とライブいずれにも共通しているのはそれが機能としてのダンスミュージックではなく、彼の脳みそをそのまま見せられて(聴かされて)いるような、そんな理由からくるドープネスやスピリチュアルさはいささかもブレはない。
弱まったかと思った雨脚が再び強くなろうと、やはりあの「Layer3」はナマで見なきゃ始まらない!ということで、スクリーンの側で見たい人、ちょっと距離を置いて全体像を見たい人どちらもホワイトに続々集まってくる。予定時間にフライローのシルエットとロゴが浮かび上がるだけで、どこにもない映像とエディット、その無限のフレキシビリティと組み合わせは想像しても無駄だ。配信で映像を見ている視聴者がリビングやベッドルームで脳内トリップしていたとしたら、ホワイトは急な気温の降下もあり、できればアガって温まりたい気持ちもヤマヤマなのだが、そこは簡単にアゲないフライロー。エディットに則して宇宙船の断面状のデザインから巨大な隕石が飛来したり、禅的なイメージのサウンドにガムランが重なったり…そう。切り貼りじゃなく彼のサウンドとビジュアルは織り成す、感じだ。
時間軸通りに飛来するイメージを書き連ねていくと、彼の人生を思いっきり圧縮したような壮大な絵巻物みたくなって、箇条書きでも1万字ぐらいすぐ達してしまいそうなイメージの断片や観念、感情が押し寄せてくる。のだが、一旦、マイクを掴むとヒップホップのマインドが前面に押し出される
のも彼の「ライブはライブの楽しみ」のひとつ。途中、カニエの「Yeezus」でラップした際にはホワイトが「おおっ?」状態で湧いたのも当然か。東京、京都、沖縄など日本の地名が連呼されたが、それが単に親日家の彼らしい煽りだったのかもっと深い意味があるのかは、その時に投影されている映像のも大きく影響される。多義的な意味合いからおのおのがイメージを膨らませることが可能なように、彼のライブは気まぐれに思えるぐらい、イメージの連鎖が半端じゃない。やはり踊るというより全神経を明け渡してブッ飛びたい。そんな表現だ。
それにしてもこのスクリーンの演出は彼が自分の作った音楽という運命の中でプレイしているような凄みだ。ラストはフジロックへの感謝を「アリガトウ、アリガトウ」「カメハメハ〜!」」とか「ゲンキダマ!」とか、「ドラゴンボール」好きっぷりを発揮して去っていった彼。いや、もう脳みそグルングルン、何に笑ってるのか不明だけど、笑いが止まらないのはすっかり彼の術中にハマったってことでしょうか。たぶんそうです。
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