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Posted on 2013/07/26 22:20
  • ライブレポート
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福原美穂

夜のアヴァロンに懸かる虹

「夢のフジロックに連れてきてくれてありがとう!フジロックに出られたら歌おうと思っていた曲です」とジャニス・ジョプリンの゛心のカケラ゛を熱唱。感じ悪い言い方をすると、実力派ボーカリストがジャニスのカバーをするという「いかにも歌唱力もソウルもあるのよ」アピールは彼女のカバーには一切感じられない。「すごい雨!雷もビカビカしてますけど、大丈夫?」と雨中のアヴァロンに集まってくれたオーディエンスに感謝しながら、「皆さんナイン・インチ・ネイルズとかスクリレックスとかいいんですか?私もちょっとスクリレックス見たかったけど」と素直なMCで笑わせる。

この日は藤井一彦(G/THE GROOVERS)、みどりん(Perc/SOIL&゛PIMP SESSIONS)、ナガイケジョー(B/SCOOBIE DO)によるなかなか濃い面々によるバンドがサポート。ソウルを歌う彼女を支えるのが、ロックのマインドも持ったグルーヴの達人なのだから、悪かろうはずがない。

マーヴィン・ゲイの゛ホワッツ・ゴーイング・オン゛も自身の新曲゛ライジング・ハート゛も、今歌いたい歌として同じ温度感で伝えられることに感銘を受ける。未知の人にはいわゆるメジャーシーンで活躍する歌のうまいディーバ系の印象があるのかもしれない。でも実際の彼女はセルフプロデュース能力も深めつつ、実生活では震災後、玄関にはギターが置いてあるという人でもある。それは自分に一番できることは歌だからだと自覚しているから。いつなんどきでも役に立てるならギター1本で歌う、そんな覚悟の決まった人でもある。

ラストは”クロスロード”のカバーを魂のこもったシャウトも交えながら歌いきり、雨の中でもほとんど立ち去る人がなかったほど、アヴァロンの観衆を惹きつけた彼女。つくづく、フジロックは思いがけない場所で、普段のリスニング志向とは違う、新鮮な宝石に出会える場所だと大げさでなく感じた。もちろんそれは福原美穂というアーティスト/ボーカリストの地力が今、どんどん上がっている証拠でもあるのだが。フジロックで往年の洋楽名曲カバーというのは実はリスキーだ。でも、そんなことを微塵も感じさせずに歌と曲のキモを伝えた福原美穂とそのバンドはなかなかのめっけもんだったはず。

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