誰よりも唄う楽器、ンゴニ
未だ見たことのない土地の音楽をどこからともなく引っ張ってきて、紹介してくれるのもフジロックの魅力。バセク・クヤーテ・アンド・ンゴニ・バの「ンゴニ」は、バンジョーのルーツとも言われる、動物の皮を張った弦楽器だ。
彼らのような土着のアーティストを見ていると、土を掘ったり、狩りをしたりするという自然の中で生き抜く術が、そのまま音楽へと繋がってくるのではないかと毎回思うのだ。自然に対して祈りを捧げる行為が音楽の始まりだったと言われているが、そんな遺伝子レベルとも言える「遠い昔の記憶」を呼び起こされるような感覚になるのだ。
バンドは、それぞれのンゴニが「一般的なバンド」で言うところのギターやベースに振り分けられており、奥には球体の打楽器が鎮座している。楽器に関していえばもの珍しい光景ではあるが、メンバー構成はロックなどのバンドとさして変わらない。音を出せばロック(揺さぶる)していて、時に、演歌や浪曲、日本民謡のようなメロディラインも顔を出し、直接結びつきづらいアフリカと日本の共通点を見せられた気がした。
小脇にかかえたトーキングドラムは誰よりも喋り、ンゴニは誰よりも歌う。打撃は身体の奥深くまで揺さぶって、知識なしの僕らを考える暇もなく踊らせてしまう。人類生誕の地の音楽は、やはり強く、楽しさと原始の恐ろしさを兼ね備えたものだった。
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