海賊船、凱旋す
「始めようぜ!」
ホワイトステージのバック・ドロップには「No Beer No Sail」と書かれた海賊旗が掲げられている。すでに開演前に流れているSEに合わせて、観客が陽気な歓声と手拍子を起こしていた。小雨降るフジロック二日目。寝ぼけた頭の目覚まし代わりにふさわしい一発目に登場するのは、日本屈指のアイリッシュ・パンクバンドとの呼び声も高い、ザ・チェ リー・コークス(以下:チェリコ)だ。
ライヴは”POLKA”の演奏とともに幕を開けた。基本となるバンド構成に加えて、マンドリンにバンジョー、ティンホイ ッスルにトランペット、アコーディオンにボーラン(アイリッシュ・ミュージックに欠かせない打楽器)、さまざまなジャンルの楽器が融合して、モチベーションの高い演奏を客席へ叩き出し始める。客席でも緑・白・オレンジ三色のアイルランド国旗やフロッドギング・モリーの旗が振られ、負けじと激しいモッシュ&ダイヴで演奏に応えていた。
「あんまり真面目に聴く音楽じゃねーからさ!」
ボーカルのKATSUOがぶっきらぼうに言う通り、息つく暇もないほど の勢いで演奏は疾走していく。その勇姿はメインステージ初登場とは思えない貫禄を漂わせている。それにしても、 ライヴで鍛えたであろうステージ上の馬力と魅力的なメロディ、そして客席に対する吸引力は凄い。最前列ではクラ ウド・サーファーが芋洗い状態に湧いて出て、セキュリティにとっての「入れ食い状態」と化している。
ボーカルのKATSUOは曲順を間違えたのかMCを忘れそうになったのか、「酔っ払ってんじゃねえのか!」と客席から景気のいいヤジを喰らっているのもご愛嬌。まるでサッカースタジアムのようにぐちゃぐちゃになるまで盛り上がって欲しいと語り出すと、”My story~まだ見ぬ明日へ~”の演奏が始まる。
メインステージは初登場のチェリコだけれど、実は2005年に場外の新人御用達ステージ、ルーキー・ア・ゴーゴーの ステージに立ったことがある。あれから8年。たくましく成長したバンドが今、メインステージの大舞台を揺らしているのだ。ライヴ後半、KATSUOが感慨深そうにこう語った。
「2005年のルーキーに出てから8年。決して短い時間じゃ無かったけど、俺たちにとっちゃ、早すぎるとは思わねえ。 くやしい思いをしたあの年、涙を流して見たステージに今、俺たちは立ってる!」
ステージの上から下げられている巨大なスクリーンに映し出されるKATSUOの目には、心なしか涙が浮かんでいるように見えた。それはきっと、客席の熱狂で湧き上がった土埃のせいだけでは無かったに違いない。
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