お酒と音楽と踊りと。
雨足が強くなった27日午後3時。開始20分前からフィールドオブヘブンにはたくさんのお客さんで溢れていた。前夜祭で見事な演出を決め、フジロッカーズの心を引っつかんだスキニー・リスターが登場する。25日の前夜祭に続き、昨日のカフェドパリを経てフィールドオブヘブンに。比較的大きなステージとなるが、どんなアクトになるのか楽しみで仕方ないのは、僕だけではないのだろう。
オンタイム。いっこうにやもうとしない雨の中、メンバーが登場する。メンバー唯一の女子、ローナ・トーマスが短いスカートを揺らし、踊りながらマイクの前へ。「カンパーイ!」そして始まったのが、アルバム『Forge & Flagon』の一曲目でもある”If The Gaff Don’t Let Us Down”。一気にイギリスの酒場へトリップ。3回目のステージともなれば、観客の扱いには馴れたもので、しょっぱなから、観客の心をつかむ。フジロッカーも負けてはおらず、しっかりコールに応えている。前夜祭の時にも思ったが、なぜこのバンドはここまでもホーム感が強いのだろう。アウェーであるはずの日本。ましてや雨。そんな中でもしっかりイギリスの空気感、否スキニー・リスターの世界に誘われるのである。話を戻そう。2曲目の”Trawlerman”でもローナはご機嫌な足踏みをならして観客と楽しそうにダンスしていた。曲が終わるとローナが「声出す準備はできた?」とたずねる。そして始まったのが、アカペラで大合唱する”John Kanaka”。シーシャンティのトラッドソング(昔から唄われてきた民謡のようなフォークソングの意)で彼らはよく地元のパブとかでお客さんを巻き込みながら唄っているようだ。アルバムのレコーディングの時ですら、お酒の雰囲気を出すためにラムを飲んでから録音したという。そんなご機嫌な曲がフジロッカーに浸透しないわけがない。3回目の今日、しっかり大合唱になっていた。その勢いで始まったのが、”Rollin’ Over”。この曲がアンセムなのだろう。イントロから歓声が上がり、サビではモッシュが起きるほどだった。さらにイングランドのトラッドソング”Polkas”では、ローナが傘を持ち出しステージを降りる。そしてお客さんと踊り始めたのだ。どうしてイギリス人ってこんなに陽気な雰囲気が合うんだろう。ちょっとしたうらやましさも感じながら、非常に愉快な雰囲気が会場を支配する。
ローナのMCが入る。「次の曲は若すぎるカップルが、結婚する為にイングランドからスコットランドとの境にある村、グレトナ・グリーンに向かう歌。この村は駆け落ち婚する場所で有名なのよ」始まった曲はスローバラード”Bonny Away”。こういったバラードを聴いても、まるでその風景が手に取るように頭に流れ込んでくる。スキニー・リスターが作り出す世界観にどっぷりはまってしまったのだ。
こうして1時間という演奏時間はあっという間にすぎてしまった。とても印象的だったのが、ライブが終わりメンバーがはけているのにも関わらず、客席では、観客同士で唄いながらモッシュを続けていた。スキニー・リスターのかけた魔法が解けるには時間がかかりそうだ。今日でフジロックの出演は終わってしまうが、フジロッカーを迎え撃つ企画が進行中とか。今後の彼らの動向に注目しよう。
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